ビジネス

竹かごを素地にした「籃胎漆器」 深い墨黒の「錆」が人気

「井上籃胎漆器 茶櫃〈二重〉錆」(大・直径約31cm×高さ13cm、4万7736円)

 漆を木や紙などに塗り重ねて作る「漆器」は、国内外を問わず人気を得ている。なかでも竹細工の持つ粋と漆の持つ堅牢さ、そして、優雅さを合わせ持つ伝統工芸品として注目を集めているのが「籃胎漆器(らんたいしっき)」だ。

「この“籃”は、竹かごのことで、“竹かごを母胎(素地)にして、漆を重ねた漆器”という意味なんです」

 そう話すのは、「井上籃胎漆器」(福岡県久留米市)の3代目当主・井上正道さんだ。その技法は、明治初期に元久留米藩の塗師であった川崎峰次郎が、竹細工師の近藤幸七の作品に漆を合わせたことから生まれたというが、昭和天皇の御大典(ご即位式)に使われた漆器の屏風は、同社初代当主の井上熊吉が製作したものだ。

 素地の竹細工には、地元の真竹を使用。竹の成長が落ち着き、ほどよく乾燥している11~12月に切り出し、節を切り取って保管した後、竹ひごにする。

「手作業で限界の細さまで割った後、専用の機械で紙のような薄さにしています。古い機械なので修理する技術者はいません。機械の調子を見ながら作業をしているんです」

 さらに、その竹ひごを編んで成形した後、堅牢にするための下地塗りをしてから、色漆などを順に8回ほど塗り重ねる。最後に、研ぎ出して竹の編み目を浮き上がらせ、仕上げ塗りをすれば完成だ。

「竹ひご、かご、下地塗り、中塗りなど、ひとつの作業を終えるたびに風で乾かします。自然の力を加えることで趣ある漆器になるんです。25年ほど前に作り出した“錆”という色は、墨黒の深い色合いで、竹の目がくっきり浮き上がる、と人気です」

 軽くて丈夫な籃胎漆器。特別な手入れは必要なく、水で洗い、丁寧に拭き上げるだけで何十年ももつという。日常使いしたい逸品だ。

※女性セブン2016年9月1日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

夜逃げした「郷土料理 たち川」に、食品偽装があったという(左はinstagramより、右は従業員提供)
「飛騨牛はホルスタイン、天然鮎は養殖モノ…」岐阜・池田温泉、町が委託したレストランで“食品偽装疑惑”「仕入れ先が減り、オーナー自らスーパーで割引の商品を…」【7月末に夜逃げしていた】
NEWSポストセブン
痩せる前のエヴィヤタルさん(インスタグラムより)
「弟はもはやガイコツ」「この穴は僕が埋葬される場所だろう」…ハマスが“人質が自分の墓を掘る”動画を公開し世界各国から非難噴出《飲まず食わずで深刻な飢餓状態》
NEWSポストセブン
本州に生息するツキノワグマ。体長120~180センチほど。最近では獣害の被害が増えている(イメージ)
《襲われる被害が多発》クマに悩まされる養蜂家たちが告白 「今年はあきらめるしかない…」「槍を作って山に入るヤツもいる」
NEWSポストセブン
デコラファッションで小学校に登校していたいちかさん、中学生となり衝撃の変貌を遂げていた…!
《デコラ小学生が衝撃の変貌》グリーン&ゴールド髪が“黒髪少女”に大転身「ほぼスッピンのナチュラルメイクで中学に登校する」意外な理由とは
NEWSポストセブン
昨年に第一子が誕生したお笑いコンビ「ティモンディ」の高岸宏行、妻・沢井美優(右・Xより)
《渋谷で目立ちすぎ…!》オレンジ色のサングラスをかけて…ティモンディ・高岸、“家族サービス”でも全身オレンジの幸せオーラ
NEWSポストセブン
“原宿系デコラファッション”に身を包むのは小学6年生の“いちか”さん(12)
《話題のド派手小学生“その後”》衝撃の「デコラ卒アル写真」と、カラフル卒業式を警戒する学校の先生と繰り広げた攻防戦【『家、ついて行ってイイですか?』で注目】
NEWSポストセブン
収監の後は、強制送還される可能性もある水原一平受刑者(写真/AFLO)
《大谷翔平のキャスティングはどうなるのか?》水原一平元通訳のスキャンダルが現地でドラマ化に向けて前進 制作陣の顔ぶれから伝わる“本気度” 
女性セブン
「池田温泉」は旅館事業者の“夜逃げ”をどう捉えるのか(左は池田温泉HPより、右は夜逃げするオーナー・A氏)
「支払われないまま夜逃げされた」突如閉鎖した岐阜・池田温泉旅館、仕入れ先の生産者が嘆きの声…従業員が告発する実情「机上に請求書の山が…」
NEWSポストセブン
バラエティ、モデル、女優と活躍の幅を広げる森香澄(写真/AFLO)
《東京駅23時のほろ酔いキャミ姿で肩を…》森香澄、“若手イケメン俳優”を前につい漏らした現在の恋愛事情
NEWSポストセブン
柳沢きみお氏の闘病経験は『大市民 がん闘病記』にも色濃く反映されている
【独占告白】人気漫画家・柳沢きみお氏が語る“がん闘病” 今なお連載3本を抱え月産160ページを描く76歳が明かした「人生で一番楽しい時間」
週刊ポスト
芸能界の“三刀流”豊田ルナ
芸能界の“三刀流”豊田ルナ グラビア撮影後に語った思い「私の人生は母に助けられている」
NEWSポストセブン
ラーメン二郎・全45店舗を3周達成した新チトセさん
「友達はもう一緒に並んでくれない…」ラーメン二郎の日本全国45店舗を“3周”した新チトセ氏、批判殺到した“食事は20分以内”張り紙に持論
NEWSポストセブン