「最近、主人と一緒にテレビを見るなんてこと、なかったなって…。同じドラマを見て、面白いねって言い合ったあとに“1回どう?”なら、同じ時間を共有できた人同士の合言葉っぽくて、うれしいかも」
そこに理想の夫婦像を見る人がいる一方で、否定的な声も少なくない。結婚生活30年以上の友田知恵さん(58才・仮名)は「冗談じゃない!」と声を荒らげる。
「3人目の子供を産んでから夫とのセックスが苦痛で苦痛で。長い時間をかけて寝室を別にして、セックスレス歴20年。子供が巣立った今“大切な家族”としてどうにか平安を保っています。もし今『1回どう?』なんて言われたら殺気立ちますよ。パンドラの箱を開けるも同然」
夫婦の数だけ異なる「1回どう?」に対する反応。これについて前出の小島さんは、「この言葉は、夫婦関係を客観的に示すリトマス試験紙みたいなもの」と分析する。
「夫から言われたらどうかな?と考えてみる。嫌じゃないな、うれしいなと思ったら関係は悪くない。だけど、もしこれまでDVや浮気性で無理矢理応じながら年を重ねた夫婦ならば『脅しの言葉』にもなりうるでしょう」(小島さん)
元・銀座の高級クラブママで、男女のコミュニケーションに詳しい、セクシャルアカデミー代表の田辺まりこさんは、「根底にいたわり合う気持ちがなければ、むしろマイナス」と警告する。
「女性として生涯求められたい、とよく聞きますが、相手によります。普段からいたわりあって、愛情関係が築けている夫婦なら奥様もうれしいと思うかもしれませんが、倦怠期だったり、セックスレスだったりする夫婦が、たまたまうまくいっている吉田さんご夫婦をマネするのは危険。
この言葉自体、女性を下に見る、とても屈辱的な表現にもなりうる。やっぱり女性は、好意のある相手からきれいな言葉で誘われた時に、心が動くのではないでしょうか」
つまり、重ねてきた夫婦関係によっては魔法の言葉ともなりうるわけだ。いずれにしてもこの「1回どう?」に私たちの心がこんなにザワザワするのは、うやむやにしていた夫とのセックス問題を急に突きつけられるからなのかも…
男性週刊誌は「死ぬまでセックス」特集をよくやるが、女の「死ぬまでセックス」はかくも難しい。
※女性セブン2016年9月8日号