国内

田中角栄 子分の親族葬儀に幹部たちで出向き選挙強化

演説のあとは汗でシャツがびしょ濡れだった 写真/山本皓一

 田中角栄は「人たらし」と言われた。会った人の心を瞬時につかみ、反対派でさえも虜にする人間的魅力を備えていた。それは言葉だけの力でもカネだけの力でもない。「人を操る心理学」を熟知していたからだろう。角栄の数々の名言の背後にある人心掌握の哲学を探求していこう。ジャーナリストの武冨薫氏がレポートする。

 * * *
〈祝い事には遅れてもいい。ただし葬式には真っ先に駆け付けろ。〉

 永田町で最強と呼ばれた田中軍団。最盛期には所属議員140人に達し、「角さんが黒といえば白いものでも黒だ」(金丸信・元自民党副総裁)という鉄の団結を誇った。そうした団結の根底にあったのが葬儀だ。

 角栄は子分だった竹下登の父の葬儀にあたり、わざわざ飛行機をチャーターして総勢69人の議員を引き連れて参列し、人口4000人の村(島根県掛合町)を驚かせた。

 派閥の幹部だった竹下だけではない。「陣笠」と呼ばれる若手議員でも、親類が死んだときには角栄は軍団を率いて遠路、葬儀に出向いた。

 九州の元田中派議員の秘書を長く務めたベテラン秘書が振り返る。

「私が仕えていた議員の父の葬儀にも、角さんが大臣や党幹部たち軍団を連れてきてくれました。地元の有権者はテレビでしか見たことがない大物議員がぞろぞろやってきたから『うちの先生はそんなに力があったのか』とびっくり。次の選挙からは後援会の参加者が増えていっぺんに選挙に強くなった」

 葬儀で子分たちの選挙を強くし、軍団を大きくしていったのである。こんなエピソードもある。報道写真家の山本皓一氏が語る。

「角栄は、昼間に背広を着て世話になった人の墓参りをすることがあった。新聞社のカメラマンたちは、それを写真に収めた。すると報道陣が引きあげた後の夕方、もう一度、私服に着替えて同じ墓に現れた。そしてあらためて静かに故人の冥福を祈る。そんな人だから『パフォーマンスのための墓参りではない』と、支持者たちにも慕われた」

※SAPIO2016年9月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
実業家の宮崎麗香
《セレブな5児の母・宮崎麗果が1.5億円脱税》「結婚記念日にフェラーリ納車」のインスタ投稿がこっそり削除…「ありのままを発信する責任がある」語っていた“SNSとの向き合い方”
NEWSポストセブン
出席予定だったイベントを次々とキャンセルしている米倉涼子(時事通信フォト)
《米倉涼子が“ガサ入れ”後の沈黙を破る》更新したファンクラブのインスタに“復帰”見込まれる「メッセージ」と「画像」
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン
峰竜太(73)(時事通信フォト)
《3か月で長寿番組レギュラー2本が終了》「寂しい」峰竜太、5億円豪邸支えた“恐妻の局回り”「オンエア確認、スタッフの胃袋つかむ差し入れ…」と関係者明かす
NEWSポストセブン
2025年11月には初めての外国公式訪問でラオスに足を運ばれた(JMPA)
《2026年大予測》国内外から高まる「愛子天皇待望論」、女系天皇反対派の急先鋒だった高市首相も実現に向けて「含み」
女性セブン
夫によるサイバーストーキング行為に支配されていた生活を送っていたミカ・ミラーさん(遺族による追悼サイトより)
〈30歳の妻の何も着ていない写真をバラ撒き…〉46歳牧師が「妻へのストーキング行為」で立件 逃げ場のない監視生活の絶望、夫は起訴され裁判へ【米サウスカロライナ】
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン
愛子さまのドレスアップ姿が話題に(共同通信社)
《天皇家のクリスマスコーデ》愛子さまがバレエ鑑賞で“圧巻のドレスアップ姿”披露、赤色のリンクコーデに表れた「ご家族のあたたかな絆」
NEWSポストセブン
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト