そのタブーに安倍首相は手をつけたのだ。石破氏や岸田氏にとって、それは強大な権力を握る安倍首相に対抗する最大のチャンスでもある。自民党役員の1人が穏やかではない言い方をする。
「石破さんや岸田さんにすれば直接、安倍首相と総裁選を戦えばゾウとアリの戦いで勝ち目はないが、総裁任期延長問題では総裁候補や非主流派の各派閥が手を組んで反対できる。そして党則改正を阻止すれば形勢はガラリと変わる。
あの小泉純一郎首相が郵政選挙で大勝利した後も、周囲から総裁任期延長を求める声があがったが、本人が任期いっぱいで退陣する意向を示した途端にレームダック(死に体)状態になった。安倍さんも任期延長に失敗すれば、その途端に求心力が下がって党内は総裁選ムードになり、いまはアリの力しかない次期総裁候補たちの存在感がぐんと強まる。力の弱い総裁候補たちにはチャンスだ」
そのうえで党内の情勢をこう分析して見せた。
「党内には入閣適齢期の6回生、5回生を中心に未入閣組が60人以上いる。彼らにすれば、安倍首相は内閣改造のたびにお友だちや側近を重用するから、安倍政権が長期化しても自分に大臣ポストは回ってこないという不満が非常に強い。派閥領袖も子分にポストを与えられないから突き上げられる。
実は、党則改正までして安倍総理に長くやってもらいたいと考えている者は党内では少数派だ。仮に党内の過半数が“安倍支持と任期延長は別問題”と延長を阻止すれば、自動的に安倍総理の2年後の退陣が確定し、いわば無血クーデターが起きる」
石破氏や岸田氏らにとっては、総理・総裁の可能性を残すか、それとも安倍首相の任期延長で永久に総理の可能性を失うかという天下分け目の勝負どころなのである。
※週刊ポスト2016年9月16・23日号