不倫という言葉や携帯電話が飛躍的に普及し出会い系サイトが繁盛したのもこの時代。行動に移すツールも身近になった。ただし、この頃までだったと思う。主婦たちにとって、ドラマが欲求解消の代償物として機能したのは。
2010年代に入っても昼ドラの過激路線は続いた。三倉茉奈が売春婦を演じた『赤い糸の女』、田中美奈子主演で「女は愛を奪い合う」がキャッチコピーの『幸せの時間』など、昼帯にもかかわらずダブル不倫やストーカー、過激描写をこれでもかと描いた。AV顔負けの過激な性的描写は放送直後から「過激すぎる」との抗議が寄せられたほど。でも、視聴率は振るわなかった。
昼ドラが現実の遥か先を行ってしまったのか。
いや、違う。もちろん、現実の主婦の欲求がドラマを超えたなんてわけでもない。昼が主婦の聖域ではなくなった。現役世代の平均年収は下降線を辿り、国は「1億総活躍」を訴えた。主婦たちは世で働くことを求められた。「背徳感」を求める女性が少なくなったとは思えない。ただ、よりリアルで安易になったのだ。
以前、女性向けのアダルトサイトの運営元を取材した際、午前9時~10時頃に最もアクセスが伸びると聞いて驚いた。夫が出勤し、子供も送り出したタイミングで、サイトにアクセスし、自慰行為や男性とのチャットに励む女性が多いという。
テレビが彼女たちを拘束できる時代は終わった。ネットやスマホがあれば時間や場所とは無関係に、各々の性的嗜好に傾倒できる。主婦たちの欲望はいま、完全にテレビから離れた。
しかしその情欲は、紛れも無く昼ドラが育んだものだった。
※SAPIO2016年11月号