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国民の8割が支持する死刑制度と被害者感情について

 私の頭はちょっとネジが外れているので、犯人が死刑になるくらいでは気が済まない。死刑判決が出て、死刑が執行されたら、逆に「なに勝手に法律ごときが俺の大問題に決着つけてんだよ!」と怒りを増幅させるだろう。

 ならば、自ら犯人に復讐すれば気が済むのか。自分が殺人犯となって牢屋に入ることくらいは構わない。しかし、妻子を殺めた者を私が殺めても、自分の妻子が生き返るわけじゃない。私は、天国の存在を信じられないので、妻子がお空の上で「仕返しをしてくれてありがとう」と微笑む絵を描けない。

「死刑を廃止すれば、被害を受けた人やその家族の気持ちがおさまらない」という理由で死刑存続を支持する人だって、自分の家族を殺めた犯人が死刑になることで救われるわけでもないだろう。「良かったね」と墓前に報告して事がおさまるほど、人間の感情は簡単か。そういかないから、殺人は「取り返しのつかない犯罪」なのだ。

 では、被害者遺族はいったいどうしたらいいのだろう。ここで一冊の本を紹介したい。今年の6月に出版されたアントワーヌ・レリス著の『ぼくは君たちを憎まないことにした』。去年の11月13日の夜、パリ同時多発テロで妻をなくした男が著した本だ。

 男は、〈妻が事件に巻き込まれたことを知った時から、行方を捜し、亡骸とむきあい、葬儀を行い、最後に息子と二人でお墓にいく日まで〉の二週間を綴った。職業はジャーナリスト。客観的事実と、自分の内面を、暴れる感情を抑えつつ、冷静に記そうとしている。

 男の妻を殺した犯人グループの3人は、フランス国家警察の特殊部隊によって1人が射殺され、2人が自爆により死亡した。が、これは組織的犯行なので、3人を指揮した者がいる。妻を殺めた者たちは、過激派組織ISとして、今も世界中で誰かの命を狙っている。

 けれども、男は「君たちを憎まないことにした」。その思いは、こうだ。

〈もちろん、非難すべき相手がいること、怒りをぶつける相手がいることで、半開きになったドアからすり抜けるように、苦悩を少しでもかわすことができるかもしれない。犯罪がおぞましいものであればあるほど、罪人は完璧な悪人となり、憎しみはより正当なものになる。人は自分自身から考えをそらすために、犯人のことを考え、自分の人生を嫌悪しないため、犯人を憎む。犯人の死だけを喜んで、残された人々に微笑みかけることを忘れる〉

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