国内

国民の8割が支持する死刑制度と被害者感情について

死刑制度について考える(写真:アフロ)

 わが国は先進国でも珍しく死刑制度を維持している。国民の支持も高い。なぜなのか。死刑制度反対論者のコラムニスト・オバタカズユキ氏が考える。

 * * *
 自分の妻子が何の罪もなく誰かに殺されたらどうするか。凶悪事件や無差別殺人事件がおきたとき、よくそんなことを考える。

 妻子を殺した殺人犯は逮捕された。裁判で死刑がくだされた。実際に刑も執行された。さて、それで自分の暴れる感情はおさまるだろうか……。

 先日、日本弁護士連合会(日弁連)が死刑制度の廃止を掲げることを決めた。10月の「人権擁護大会」にて、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言案」を提出する。日弁連はかねてより死刑制度に批判的だったが、明確に廃止を打ち出すのは初めてのことらしい。

 私は死刑廃止論者だ。けれども、日弁連の動きには唐突を感じる。相次ぐ冤罪や世界的潮流を受けて、ということだが、冤罪はそんなに増えている? 世界的にそうだから自分たちもそうする?

 もっと分からないのは、宣言案の勝算をどう見積もっているかだ。死刑制度存続の声がまったく減っていない日本で、どう説得的に廃止の同意を得ようというのか。日弁連だけが国民の中で浮いてやしないか。

 死刑制度の是非について、大規模に行われた調査に、平成26年度の「基本的法制度に関する世論調査」(内閣府)がある。それによると、「死刑もやむを得ない」と答えた者の割合が80.3%、「死刑は廃止すべきである」は9.7%。

「やむを得ない」という消極的選択肢は、「すべきである」という積極的選択肢よりも選びやすい。その問題があるにしても、8:1の差はすごい。他の調査でも、この国の死刑制度は一貫して支持されている。

 冤罪の怖さや、殺人事件が増えていないデータや、死刑制度がたいして殺人の抑止効果をもたない現実などを、死刑廃止論者がいくら訴えても、存続支持の世論は揺らいだことがなかった。

 先進国では死刑制度を廃止した国のほうが多いのに、なぜ日本では支持が強いのか。これも「基本的法制度に関する世論調査」が調べている。

 死刑制度に関して、「死刑もやむを得ない」と答えた者にその理由を聞いたところ、「死刑を廃止すれば、被害を受けた人やその家族の気持ちがおさまらない」を挙げた者の割合が53.4%、「凶悪な犯罪は命をもって償うべきだ」が52.9%(複数回答可)。

 命を奪った者は命をもって償え、より少しだけ、被害者家族感情のために、という理由のほうが多い。そう答えた人たちの少なからずはおそらく、私のように「もし自分の家族が殺されたら」と想像したのではないか。そして、「家族が殺されたのに、殺した犯人が生かされている」状態が頭の中に見えた瞬間、「冗談じゃない、死刑にしてくれ!」と思ったのではないか。

関連記事

トピックス

キャンパスライフを楽しむ悠仁さま(時事通信フォト)
《新歓では「ほうれん草ゲーム」にノリノリ》悠仁さま“サークル掛け持ち”のキャンパスライフ サークル側は「悠仁さま抜きのLINEグループ」などで配慮
週刊ポスト
70歳の誕生日を迎えた明石家さんま
《一時は「声が出てない」「聞き取れない」》明石家さんま、70歳の誕生日に3時間特番が放送 “限界説”はどこへ?今なお求められる背景
NEWSポストセブン
イスラエルとイランの紛争には最新兵器も(写真=AP/AFLO)
イスラエルとの紛争で注目されるイランのドローン技術 これまでの軍事の常識が通用しない“ゲームチェンジャー”と言われる航空機タイプの無人機も
週刊ポスト
一家の大黒柱として弟2人を支えてきた横山裕
「3人そろって隠れ家寿司屋に…」SUPER EIGHT・横山裕、取材班が目撃した“兄弟愛” と“一家の大黒柱”エピソード「弟の大学費用も全部出した」
NEWSポストセブン
ノーヘルで自転車を立ち漕ぎする悠仁さま
《立ち漕ぎで疾走》キャンパスで悠仁さまが“ノーヘル自転車運転” 目撃者は「すぐ後ろからSPたちが自転車で追いかける姿が新鮮でした」
週刊ポスト
無期限の活動休止を発表した国分太一
「こんなロケ弁なんて食べられない」『男子ごはん』出演の国分太一、現場スタッフに伝えた“プロ意識”…若手はヒソヒソ声で「今日の太一さんの機嫌はどう?」
NEWSポストセブン
9月に成年式を控える悠仁さま(2025年4月、茨城県つくば市。撮影/JMPA)
《模擬店では「ベビー核テラ」を販売》「悠仁さまを話題作りの道具にしてはいけない!」筑波大の学園祭で巻き起こった“議論”と“ご学友たちの思いやり”
NEWSポストセブン
1993年、第19代クラリオンガールを務めた立河宜子さん
《芸能界を離れて24年ぶりのインタビュー》人気番組『ワンダフル』MCの元タレント立河宜子が明かした現在の仕事、離婚を経て「1日を楽しんで生きていこう」4度の手術を乗り越えた“人生の分岐点”
NEWSポストセブン
元KAT-TUNの亀梨和也との関係でも注目される田中みな実
《亀梨和也との交際の行方は…》田中みな実(38)が美脚パンツスタイルで“高級スーパー爆買い”の昼下がり 「紙袋3袋の食材」は誰と?
NEWSポストセブン
カトパンこと加藤綾子アナ
《慶應卒イケメン2代目の会社で“陳列を強制”か》加藤綾子アナ『ロピア』社長夫人として2年半ぶりテレビ復帰明けで“思わぬ逆風”
NEWSポストセブン
2人の間にはあるトラブルが起きていた
《2人で滑れて幸せだった》SNS更新続ける浅田真央と2週間沈黙を貫いた村上佳菜子…“断絶”報道も「姉であり親友であり尊敬する人」への想い
NEWSポストセブン
ピンク色のシンプルなTシャツに黒のパンツ、足元はスニーカーというラフな格好
高岡早紀(52)夜の港区で見せた圧巻のすっぴん美肌 衰え知らずの美貌を支える「2時間の鬼トレーニング」とは
NEWSポストセブン