須田教授が開発したホームドアの革命児「どこでも柵」は、2013(平成25)年に西武鉄道新宿線の新所沢駅で半年間にわたって実証実験がおこなわれた。現在は実用段階に向けての試行錯誤が進められている。
ホームドアの研究・開発を進めているのは須田教授だけではない。研究機関や企業でも研究開発は進められている。ホームドアの進化スピードは、一昔前とは比べ物にならなくなった。
しかし、ホームドアが普及するようになったのは、技術的な部分よりも「利用者や鉄道事業者などの心境が変化したこと」だと須田教授は指摘する。
「最近は、ホームドアの有益性が広く認知されるようになりました。利用者も、これまでは”あればいいね”という雰囲気でしたが、今は”あって当たり前”という意識に変わってきています。これまで費用の面からホームドアの導入に消極的だった鉄道会社も、そうした社会的状況の変化から導入に積極的な姿勢に変わってきています」(同)
ホームドアの設置に関して、課題はまだある。現在、国土交通省は1日10万人以上が利用する駅にホームドアを設置するように鉄道各社に通達を出している。10万人というのは、利用者が多い駅はホームが混雑して乗客が線路に転落する可能性が高いことから目安にししたと推測される。
しかし、そうした基準を設けることで事故が起きてしまう可能性もある。同じ路線なのにA駅にはホームドアがあって、B駅にはない。そんな状況では、視覚障害者は混乱してしまう。ちぐはぐな設置状況が原因で、転落事故を誘発する可能性もある。