芸能

『とと姉ちゃん』の戦争描写は当時を知る日本人の共感得られない

『とと姉ちゃん』には賛否両論が渦巻く

 数々の名作を世に送り出してきたNHK『連続テレビ小説』(朝ドラ)には、戦時下の日本をテーマにした作品が多い。だが、国史研究家の小名木善行氏はその描写に疑問を呈す。

 * * *
 現在放送中の『とと姉ちゃん』では戦争が描かれていますが、違和感を覚えます。

 第74話では、ヒロインの常子が防空壕で空襲の恐怖に怯える場面が描かれます。常子はその翌日、自身が勤める出版社で「戦争を称え、国民を煽るような雑誌を作りたいという気持ちにはどうしてもなれない」と訴えますが、一方で「お国を守るために戦争をしなければならないのは仕方のないことです」とも言う。

 つまり、「戦争は仕方がないが、自分が戦争に加担するのはイヤ」という主張です。問題は、こうしたヒロインの主張がクローズアップされることで、あたかも当時の日本国民の気持ちを代弁しているかのように描かれていることです。

 もちろん、戦時中だって戦争そのものを称える人など少数派でした。その一方で、始まってしまった戦争の中、家族や郷里を守るために戦うことを決意した日本人が大勢いた。

 ヒロインの前述のような言動は戦後の日本人からは共感を得られるのかもしれませんが、当時を知る日本人の共感を得ることはできないと私は思います。

【PROFILE】1956年生まれ。静岡県浜松市出身。会社員、会社経営を経て国史研究家として活動。日本の正しい歴史を伝える自身のブログ「ねずさんのひとりごと」が人気に。著書に『昔も今もすごいぞ日本人!』、日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く「百人一首」』(いずれも彩雲出版刊)などがある。

※SAPIO2016年11月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン