──広島大学は「世界トップ100」に入るために、具体的にどんな戦術を用意しているのでしょうか?
山下:独自に編み出した指標「A-KPI(アチーブメントモチベーテッド・キー・パフォーマンス・インジケータ)というものを見せてもらいました。世界トップ100の大学になるためにこなすべき課題を洗い出し数値化し「見える化」したものです。詳細は本書に記しましたが、簡単にいえば、この数値目標をこなせば100位以内は達成される、という具体的な道筋です。進むべき行程は見えた。しかし、本当に目的地に達するかどうかはまだわからない。
広大の越智学長は「妙に背伸びをしたり、実力以上に見せようと虚勢を張っているわけではないんです。今持っている力をきちんと自覚し、戦略に沿って現状を伸ばし、その数値を学外からはっきり見えるようにすれば世界100位に入ることは決して夢物語ではありません」と語っていました。
──大学をめぐる問題は、グローバル化だけではなく少子化など深刻です。
山下:横ばいだった18歳人口は2018年以降減少局面に入り、入学志願者はますます奪い合いになります。教育産業だけの問題ではないのです。例えば自動車産業。東京五輪が開催される2020年、国内で販売される台数が今より約2割減る、という試算もあります。つまり、今必死になって改革に取り組み競争力を付けようとしている教育産業は「さきがけ」であって、いずれは日本の企業や自治体、さまざまな組織が、このシビアな問題に直面する。だから今、大学が積極的に繰り出している挑戦と試行錯誤の中に、明日の日本の課題と解決のヒントが詰まっている、そんなつもりで本書を執筆しました。