──日本の大学のランクが上がっていかない理由とは、何なのでしょうか?
山下:シンガポールや中国の大学が順位を上げている理由には、教育機関への投資を国が増加して世界各国から優秀な人材を募る戦略が効いているようです。対して、日本の大学への公的な投資は削減傾向にあり、外部からの資金も諸外国に比べて少ない。国際化にも遅れをとっている等、いくつもの問題点が指摘されています。
──影響力を持つTHE「世界大学ランキング」ですが、そもそもどんなものさしで順位を決めているのですか?
山下:インターナショナルな講師・留学生の在籍数、論文被引用数、教育環境、他国の研究者との共同研究等といった13の項目がものさしになっています。例えば、論文の引用数はランキングを決める要素の一つですが、対象は英語論文。つまり、英語圏の大学が有利というわけでさまざまな矛盾も含んでいる。でも一方で、グローバル化の中で競争しようとすれば英語を中心としたコミュニケーションを無視してはいられない現実もあるわけですね。
たとえば留学を考えている外国の学生がTHEのランキングを見て大学を選択するかもしれないし、企業や研究所が共同研究の相手を選ぶ時の一助にランキングを参照することもありうるでしょう。だからランキングには問題点もあるけれど、実際上の影響力も持っている、ということですね。
──つまり、非英語圏の大学は不利だと。
山下:たしかにそうした側面はあると思います。そもそも世界ランキングが大学の価値を測定しうる指標なのか、単純な順位を大学の価値のように鵜呑みにしていいのか、といった批判的な意見も、実はたくさん聞かれます。
実際、私自身も取材時に「特定の世界ランキングなんかで右往左往、一喜一憂していてもしょうがない」という言葉を、広大前大学経営企画室室長・相田美砂子氏から直接耳にしました。しかし同時に「だからといって、ランキングを無視していればいいのでしょうか。何もしないで放っておいて、今大学が抱えている問題を解決することはできるのでしょうか」と相田氏は語っています。ランキングに振り回されるより「大学が活性化し変わるためのチャンス」と捉え、道具として上手に使ってしまうおう、というタフさのようなものを広大に感じました。実際、「トップ100入り」という明快な目標を掲げていることもあってか広大の順位は上昇傾向にあり、6月に発表されたアジア地域限定のTHE大学ランキングの順位も上がってきています。