ライフ

「散骨」って実はこんなに大変なんです トラブルも多発中

火葬した後もトラブルの種が

 自分の死後、「残された家族に負担をかけたくない」といった理由で人気なのが「散骨」だ。しかし、いざ実行すると、さまざまなトラブルが待っていることもある。

「海釣りが好きだった主人は『いつも眺めていた相模湾に骨を撒いてほしい』と言い残して亡くなりました。『田舎への墓参りも面倒だろう』と、私たち家族にも気を遣ってくれたのです」(72歳の夫を亡くした68歳女性)

 最近、こうした“散骨希望者”が増えている。都内の葬儀業者は、「全国に散骨業者は約80社あり、年間の散骨件数は1万件ともいわれている」とする。

 定額葬儀サービスで知られる「小さなお葬式」では、2013年から海洋散骨の代行を行なっているが、「サービス開始当初と比べて依頼件数は倍増した」(広報部)と活況を強調した。

 散骨を希望する理由は、「自然に還れる」「入る墓を決める時の親戚とのやり取りが面倒くさい」「お墓を継ぐ人がいない」「そもそもお墓を作るお金がない」というものが多いという。

 だが、安易に散骨を選択すると、思いがけないトラブルと遭遇することになる。冒頭の女性はこう語る。

「主人の遺骨を希望通りに海洋散骨したところ、親戚から『墓を建てるカネが惜しいのか』と総スカンに遭い、冠婚葬祭にも呼ばれなくなってしまいました」

 散骨は、こうした親戚間でのトラブル原因になりがちだ。NPO法人・葬儀費用研究会の冨永達也・事務長はこういう。

「散骨した親族が、親戚から『お参りができないじゃないか』『成仏させてあげられない』と責め立てられてしまうケースもある」

 予想もしなかった反発を受けた例もある。

「散骨したといったら、菩提寺の住職の態度が急変。『魂のない仏壇にお参りするつもりはない』と、月命日にお経をあげてもらえなくなった」(78歳の妻を亡くした80歳男性)

 また、家族が業者を通さずに個人で散骨すると、「国立公園になっている山中に勝手に撒いてしまい、バレて問題になることもある」(関西の葬儀社関係者)という。

 家族が後々トラブルに巻き込まれないようにするためには、次のような注意点が必要だと葬儀コンサルタントの市川愛氏は話す。

「散骨を希望する方が、家族、親戚としっかり話し合って自分の意志を伝え、根回ししておくこと。遺骨の一部だけを散骨してもらうように頼むことも一つの手です。遺骨が全く手元に残らないと、後で『拠り所がない』と後悔するご遺族が少なくないのです」

 トラブルの“置き土産”を残すことなく、スッキリと旅立ちたいものだ。

※週刊ポスト2016年9月30日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン