ライフ

歯科医が大きな利益を得る激安セラミックの正体

マイクロスコープで治療する小林優氏

「保険診療でしっかりとした治療はできない」と証言する歯科医は多い。一方、費用に見合うメリットが自費診療にあるのかというと、そうとも言い切れない実情がある。

『ジルコニアクラウン 限定大特価! 1万2千円→5555円』

 これは都内のある歯科医院に業者から送られてきた“目玉商品”の案内チラシの文言である。

 ジルコニアクラウンは、セラミック素材の中で最も高価で、東京の歯科医院では約12万~15万円が相場。むろん「保険」ではなく「自費」扱いである。

 歯科医にとって大きな利益を得る“商品”と言えるが、問題なのは、このチラシのような激安製品の場合、たいていは海外から輸入されたセラミックであることだ。

 一時期、銀歯のクラウン等を中国の歯科技工所に製造委託していたことが問題となり、厚労省は保険診療で輸入品を使用することを禁止した。

 その一方、なぜか自費診療のセラミック・クラウンは輸入が黙認状態になっているのだ。安全性や耐久性が担保されていない海外製品に、自費診療で高い費用を払わされているかもしれないので、注意が必要だ。対価に見合う自費診療として、注目されているものがある。

「歯科治療で最大の技術革新は、マイクロスコープでしょう。最も効果が大きいのは虫歯の早期発見、早期治療が可能になったことです。次に根管治療です。従来の治療は手探りでしたが、マイクロスコープでは根管の奥まで可視化された状態で治療できます。アメリカでは、根管治療にマイクロスコープを使用するのが必須です」

 こう語るのは日本歯内療法学会・理事の小林優院長(東京・村岡歯科医院)。マイクロスコープを使った精度の高い根管治療を自費診療のみで行っている。

 根管治療は虫歯になった歯を残す最後の手段だが、保険診療では根管充填という治療で一回68点。(単管の場合)歯科医の収益は、680円の計算だ。これに対して、小林院長の治療は約1時間で2万~3万円だという。

「マイクロスコープの根管治療は極めて難易度が高いのも事実です。最近はマイクロスコープを売りにした歯科医が増えて、これ見よがしに治療画像をホームページに掲載していますが、お粗末なものも多い」

 マイクロスコープと同様、歯科治療の技術革新とされているのが、インプラント治療だが、未熟な手術や、抜く必要のない歯をインプラントにしてしまうことが長年問題視されているにもかかわらず、現在まで何も解決していない。

 日本の自費診療における問題は、歯科医の技術を客観的に評価できる情報や基準が少ないことだ。

 学会が乱立して認定医や専門医の称号が一人歩きしている状態は、歯科業界の怠慢だろう。

●文/岩澤倫彦(ジャーナリスト)と本誌取材班

※週刊ポスト2016年10月7日号

トピックス

高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
阿部なつき(C)Go Nagai/Dynamic Planning‐DMM
“令和の峰不二子”こと9頭身グラドル・阿部なつき「リアル・キューティーハニー」に挑戦の心境語る 「明るくて素直でポジティブなところと、お尻が小さめなところが似てるかも」
週刊ポスト
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン