国内

動物園の悲しい事情 相次ぐ事故や入場者減少も

入場者の減少や赤字に悩む動物園も多い

 9月19日、長寿を祝う「敬老の日」。この日は各地の動物園で、動物の“お年寄り”を祝うイベントが開催され、大にぎわいだった。例えば『神戸市立王子動物園』(兵庫)では、国内最高齢のチンパンジー・ジョニー(推定66才)にバナナやぶどうをトッピングしたケーキが贈られた。

 なんとジョニーは、人間に換算すると100才。また、『宇都宮動物園』(栃木)では、来園した子供たちがツキノワグマの老夫婦クーとマー(人間換算80才)に、ハチミツをかけたケーキをプレゼントした。

 そして、シルバーウイーク最終日の9月25日。『上野動物園』(東京)には、開園前から老若男女が列をなしていた。待つこと30分、やっと中に入ると、パンダ舎の入り口にすぐに行列ができる。

「1970年代のパンダブームの時も、こうして見に来ました。もう一度、今度は孫と一緒にパンダを見られてとてもうれしい」と3世代で来園した家族連れなど、幅広い年齢で楽しめるのが動物園の大きな魅力だ。

 大の動物園好きと公言しているタレント・坂下千里子(40才)も、やはり娘と行くことが多いと話す。

「動物園は、祖父母との思い出の場所。3才の時、初めて動物園に行ったときにふたりにはさまれて撮った写真は、今でも宝物です。今は娘に、ゾウやキリンなどなかなか日常で会えない動物と触れ合ってほしいという気持ちから、足を運んでいます」(坂下)

 しかしその一方、「年々、来場者が減少」「大きな赤字」「動物が相次いで事故死」など、問題を抱える動物園も多い。

『天才!志村どうぶつ園』(日本テレビ系)に出演して話題になったチンパンジー「パンくん」が暮らす『阿蘇カドリー・ドミニオン』(熊本)は、来場者が最盛期の半分以下に減少し、赤字で事業譲渡された。そして、厳しい状況は、あのスター動物園も例外ではなかった。

「とにかく動物との距離が近い。ゴリラのおしっこやうんちが危うくかかるところでした」

 そう坂下も興奮気味に語る『旭山動物園』(北海道)。8月最後の週末に訪れた同園は大勢の家族連れやカップル、外国人でにぎわっていた。しかし、そのにぎわいは10年前、毎日のようにテレビや雑誌で旭山動物園が取り上げられていた頃、記者が感じたものとは全く違った。

 当時は、園内を自由に歩けないほど人があふれ、まるで連休中の原宿・竹下通り、あるいは『東京ディズニーランド』のような状態だった。大人気のアザラシやペンギンを見るために2時間並ぶのは当たり前で、とても1日ではすべての動物を見ることができなかった。

 だから今回、アザラシもオランウータンもキリンも、全く並ばず、スムーズに見て回ることができたことに違和感を覚えた。

 聞けば、2007年の絶頂期に年間300万人だった来場者数は、現在その半数にまで減少しているという。この状況について、園長の坂東元さんは、意外にも「ちょうどいい」と話す。

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン