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山崎拓氏「『乱』さえなければ加藤紘一さんは総理になれた」

盟友・加藤紘一さんについて語る山崎拓氏

 元官房長官の加藤紘一氏が亡くなり、小泉純一郎氏、山崎拓氏との盟友関係「YKK」に再び注目が集まった。折しも『YKK秘録』(講談社刊)を上梓したばかりの山崎氏が、故人を偲ぶ。

 * * *
 そもそもYKKのレールは、加藤さんが敷いてできたもの。私と加藤さん、小泉さんの3人は、それぞれ派閥も違う。その派閥も違う3人が集まって、主流派だった経世会を倒すためにYKKができた。「友情と打算の二重構造」という表現が広まっているが、そもそもは「打倒経世会」が目的でした。

 YKKはライバル関係でもありましたが、総理を目指すという点においては、私は加藤さんを応援する立場でした。加藤さんの宏池会は歴史のある老舗派閥だし、規模も大きかった。

 私としては、まずは加藤さんが総理になり、その次というのを考えていました。しかし、加藤さんは総理にはなれなかった。「加藤の乱(※注)」さえなければ、総理になれていたと思います。

【※注/2000年、森喜朗内閣打倒を目指して加藤氏、山崎氏らが起こした倒閣運動。内閣不信任案可決を狙ったが、切り崩されて失敗に終わった】

 マスコミのなかには、加藤の乱そのものではなく、途中で断念したことが悪かったという向きもありますが、実際を知らない無責任な、あてずっぽうの見方に過ぎません。あのとき、加藤さんに同調する人と反対する人で宏池会が分裂した時点で負けだったのです。

 分裂しなければ、民主党の協力もあり、不信任案は通ったでしょう。それで政府は解散総選挙に打って出たと思うし、加藤さんは総理になっていたはずです。しかし結果的に分裂の流れを読み切れなかった。あのまま続けていれば、さらに派閥に甚大な被害が出ていたはずです。

 一方で今の安倍政権は非常に盤石ですが、これは、たまたまに過ぎません。

 そもそも(2012年の)総裁選で安倍さんは2位だったでしょう。2位だったのに、総裁選のルールによって1位になり、自民党総裁になれた。そんなことは本来ないんだけれど、そうなった。党内も揉めるはずなのに、そうはならなかった。それはでも、結果的にそうなったということ。安倍さんも加藤さんも、運の巡り合わせですね。

 いずれにせよ、日本政界の最強最高のリベラルが世を去った。ああいう政治家は、もう出てこないでしょう。

●やまさき・たく/1936年生まれ。1972年初当選。自民党幹事長、党副総裁、防衛庁長官や建設大臣を歴任。

※週刊ポスト2016年10月14・21日号

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