ビジネス

鉄道会社の接客サービス拡充へ 「反合理化路線」が好評

えちぜん鉄道に乗務するアテンダント

 かつて鉄道や路面電車、路線バスには運転手と車掌が必ず乗車した。40~50年前から始まった合理化でワンマン運転が広まり、今では新幹線など一部の車両を除いて運転手のみになった。ところが、最近は逆に乗務員を添乗させる動きがある。鉄道会社において、合理化とは相容れない人による接客が見直されている様子についてライターの小川裕夫さんがリポートする。

 * * *

 今般、どの業界も人手不足に喘いでいる。そうした状況を踏まえ、経済界はIoTやAIに力を入れて、すこしでも人手不足を解消するように努めている。

 機械化やIT技術の導入を進めているのは鉄道業界も同じだ。運転士・車掌の2人体制で運行されていた列車はワンマン運転に切り替えられた。駅では自動券売機が普及し、窓口は無人化。改札も自動改札機が普及し、駅員はどんどん少なくなっている。

 そうした人員削減によって経営合理化を進めてきた鉄道会社だが、近年は人的サービス、いわゆる人による接客が見直されるようになってきている。

 鉄道は時間通りに目的地に着くことをウリにしていた。定時運行だけではなく、新幹線のように早く目的地に到着することも鉄道会社のサービスといえるが、長らく鉄道会社において”接客”という概念は薄かった。

 しかし、昨今は変化の兆しが見られるようになってきた。”人を運ぶ”ことから”おもてなし”へと軸足を移そうとする鉄道会社も出始めている。その先駆的な存在が、福井県を地盤とするえちぜん鉄道だ。

 えちぜん鉄道は2003(平成15)年に発足した新顔だが、その前身は1942(昭和17)年に創業した京福電気鉄道(京福)だ。

 歴史ある京福は、収益の悪化により福井県内から撤退。その後、福井県内の自治体が出資して、第3セクター・えちぜん鉄道として再出発した。

 それと同時にワンマン化で合理化を進めてきた方針を変え、アテンダントと呼ばれる乗務員が車内サービスをおこなうようになった。

 従来、乗客が少ないローカル線は少しでも経費を削減しようとして、無人駅化や列車のワンマン運転化に努めてきた。経営を効率化しなければ、とても路線を維持できない。経営上の判断から、合理化はやむ得ない措置でもあった。

 しかし、えちぜん鉄道は逆転の発想に出る。えちぜん鉄道の乗客は、そんなに多いわけではないのに、アテンダントを乗務させた。人員を増やせば、人件費は増える。当然、列車を運行する経費もかかる。

 それでも、えちぜん鉄道はアテンダントを乗務させて、は車内放送や切符の販売、高齢者の乗降介助、そして沿線の観光案内といったサービスをおこなった。えちぜん鉄道の乗客数なら、これらの業務は運転士一人で兼ねることも不可能ではない。それでも、えちぜん鉄道はアテンダントを乗務させて、人的サービスの充実を図った。

関連キーワード

関連記事

トピックス

橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
看護師不足が叫ばれている(イメージ)
深刻化する“若手医師の外科離れ”で加速する「医療崩壊」の現実 「がん手術が半年待ち」「今までは助かっていた命も助からなくなる」
NEWSポストセブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
キール・スターマー首相に声を荒げたイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
《英国で社会問題化》疑似恋愛で身体を支配、推定70人以上の男が虐待…少女への組織的性犯罪“グルーミング・ギャング”が野放しにされてきたワケ「人種間の緊張を避けたいと捜査に及び腰に」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン
フレルスフ大統領夫妻との歓迎式典に出席するため、スフバートル広場に到着された両陛下。民族衣装を着た子供たちから渡された花束を、笑顔で受け取られた(8日)
《戦後80年慰霊の旅》天皇皇后両陛下、7泊8日でモンゴルへ “こんどこそふたりで”…そんな願いが実を結ぶ 歓迎式典では元横綱が揃い踏み
女性セブン
犯行の理由は「〈あいつウザい〉などのメッセージに腹を立てたから」だという
「凛みたいな女はいない。可愛くて仕方ないんだ…」事件3週間前に“両手ナイフ男”が吐露した被害者・伊藤凛さん(26)への“異常な執着心”《ガールズバー店員2人刺殺》
NEWSポストセブン