双方とも「保守的な主張をする団体」ということでは共通するが、神社本庁の方がある意味で“先鋭的”なのだ。両団体とも「日本会議国会議員懇談会」や「神道政治連盟国会議員懇談会」といった関係団体を持ち、自民党の政治家とパイプがあるとされているが、より具体的な影響力を保持しているのは日本会議の方だとされている。
一方の神社本庁の思想は、それほど自民党と親和性が高くない。彼らの思想が色濃く反映されているものに、たとえば神社本庁の広報・機関紙的な役割を担う『神社新報』という新聞がある。この新聞の論説欄などに頻繁に登場するのが、大日本帝国憲法への賛辞にも近い肯定的評価だ。
ここ数年の紙面をざっと点検すると、「(憲法改正は)帝国憲法にまで遡って明治の先人による自主憲法制定過程の苦心とその精神を学び、今日に活かすといふ道程を取るべきだ」(2013年9月16日付)、「(憲法改正運動は)明治の帝国憲法こそが指針となってくる」(2012年5月21日付)といった具合だ。
日本の神道とは、その頂点に祭祀王たる天皇をいただく教義体系を持つところから、当然のようにその政治的姿勢は保守・右派である。日本国憲法を改正せよとの主張も、神社界は戦後一貫して叫び続けてきた。
ただし、同じく憲法改正を党是とする自民党が今、「憲法を現在の国際・社会環境に合致させるため」というスローガンの下でその取り組みを進めるのに対し、神社界は「大日本帝国憲法という理想に帰る」という形で憲法改正の必要性を叫ぶ。
●おがわ・かんだい/1979年、熊本県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。宗教業界紙「中外日報」記者を経て、季刊「宗教問題」編集長に。
※SAPIO2016年11月号