国際情報

在日コリアンのアイデンティティが肯定的に変わる韓国留学

韓国留学が変化のきっかけに AFLO

 ソウル大学大学院で社会学を専攻したユン・ダイン氏(27歳)の修士論文が韓国で話題になった。その論文によれば、インタビューに応じた22人の在日韓国人留学生のうち20人が「私は韓国人ではない」「私は在日」という意識を留学中に強化していることがわかったからだ。在日韓国人ジャーナリストのコナー・カン氏が、論文を執筆したユン・ダイン氏になぜそのような意識を持つようになるのかを聞いた。

 * * *
 在日韓国人が母国で対峙するのは、心無い言葉や態度ばかりではない。前出・ユン氏(27)が語る。

「『韓国人か日本人か』の二者択一を迫られるような場面があります。ある女性は、卒業の要件として『大学・国語(韓国語)』という授業の履修を課されました。しかしその授業は、本来韓国語のネイティブ向けの必修課目。彼女は日本で育ったため、韓国語をあまり喋れなかった。でも国籍が韓国だから、韓国人同様に扱われた。当然、彼女は履修に苦労します。このような状況は、在日コリアンにとって非常にストレスがかかるようです」(ユン氏)

 そうした経験を通して、在日の学生は自らのアイデンティティを“再発見”することになるという。

「在日コリアンとしてのエスニックアイデンティティが、否定的なものから肯定的なものに変わったという意見が多くありました。韓国に来たこと自体を後悔している人はほとんどおらず、みな貴重な経験だったと話しています」(ユン氏)

 論文が受賞した時、ユン氏は授賞式関係者からこんな質問をされたという。

「『毎年、在外同胞財団が母国修学を運営する資金を捻出しているけれども、この論文によるとあまり効果がない。財団の目標と異なるので、プログラムを無くしたほうが良いのか』と問いかけてきました。自分が書いた論文で、在日コリアンに提供された機会が無くなるのは本意ではありません。

 韓国はまだ外国人や多様性に慣れていない。最近は多文化共生社会を達成しようと、政府や自治体が様々な施策を打ち出しています。それでも、マイノリティである在日コリアンは韓国の中の死角地帯にいて、自分たちの権利のために戦っている状態です。

 在日同胞の学者・徐京植(ソキョンシク)氏は『他者が相違を認めながら共に生きる社会が実現すれば、日本は在日だけでなく、日本人にとっても住みよい社会になるだろう』といい、これは韓国社会にも適用できるとしています。私の論文が、韓国で境界人として生活し誤解や偏見に晒されている在日同胞と、韓国人の望ましい共生に貢献できることを願っています」(ユン氏)

※SAPIO2016年11月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

「講書始の儀」に初出席された悠仁さま(時事通信フォト)
《講書始の儀》悠仁さまが“綺麗な45度の一礼” 「紀子さまの憂慮もあって細かな準備があった」と皇室記者、新年祝賀の儀での秋篠宮さまの所作へのネット投稿も影響か
週刊ポスト
デビットベッカムと妻・ヴィクトリア(時事通信フォト)
〈ベッカム家が抱える“嫁姑問題”の現在〉長男の妻・ニコラがインスタから“ベッカム夫妻”の写真を全削除!「連絡は弁護士を通して」通達も
NEWSポストセブン
ニューヨーク市警に所属する新米女性警官が、会員制ポルノサイトにて、過激なランジェリーを身にまとった姿を投稿していたことが発覚した(Facebookより)
〈尻の割れ目に赤いTバックが…〉新米NY女性警官、“過激SNS”発覚の中身は?「完全に一線を超えている」
NEWSポストセブン
厳しい選挙が予想される現職大臣も(石原宏高・環境相/時事通信フォト)
《総選挙シミュレーション》公明票の動向がカギを握る首都決戦 現職大臣2人に落選危機、高市支持派アピールの丸川珠代氏は「夫とアベック復活」狙う
週刊ポスト
「ゼロ日」で59歳の男性と再婚したと報じられた坂口杏里さんだが…
《3年ぶり2度目のスピード離婚》坂口杏里さんの「ふっくら近影」に心配の声…「膝が痛くて…でもメンタルは安定してます」本人が明かした「59歳会社員との破局の背景」
NEWSポストセブン
笑いだけでなく「ふーん」「ええ!」「あー」といった声が人為的に追加される(イメージ)
《視聴者からクレームも》テレビ番組で多用される「声入れ」 若手スタッフに広がる危機感「時代遅れ」「視聴者をだましている感じがする」
NEWSポストセブン
新春恒例の「歌会始の儀」に出席された愛子さま(2026年1月14日、写真/時事通信フォト)
《ラオスご訪問を歌に》愛子さま、テーマ「明」に相応しいピンクのドレスで雅子さまとリンクコーデ 色やパールでフェミニンさとフォーマル感を演出
NEWSポストセブン
北海道日高町で店の壁の内側から遺体が見つかった事件。逮捕された松倉俊彦容疑者(49)、被害者の工藤日菜野さん。(左・店舗のSNSより、右・知人提供)
「なんか臭くない?」「生ゴミを捨ててないからだよ」死体遺棄のバーで“明らかな異変”…松倉俊彦容疑者が見せた“不可解な動き”とは【日高・女性看護師死体遺棄】
NEWSポストセブン
カンボジア内務省は1月7日、米当局が“アジア最大の犯罪組織のひとつ”とする企業「プリンス・グループ」のチェン・ジー会長を逮捕したと発表した(時事通信=AFP)
「問題がある者を叩け。ただし殺すな」拷問に人身売買、ロマンス詐欺も… “アジア最大の在カンボジア犯罪組織”トップの中国人が「都内15億超えの高級マンション」に拠点
NEWSポストセブン
元旦に結婚を発表した長澤まさみ
《長澤まさみが過去のSNS全削除と長期休養への背景》長澤まさみ、主演映画の撮影を1年延ばして選んだ電撃婚 『SHOGUN』監督夫と“帯同同伴カナダ計画”
NEWSポストセブン
北海道日高町で店の壁の内側から20代の工藤日菜野さんの遺体が見つかり、松倉俊彦容疑者(49)が逮捕された(左・知人提供)
《日高・バーの壁に死体遺棄》「誰が見ても親密そうだった」「2人してよく酒を遅くまで飲んでいた」松倉俊彦容疑者(49)と“21歳年下”被害女性の関係とは
NEWSポストセブン
大分市立中学校の校内で生徒が暴行を受けている動画が、SNS上で拡散された(Xより)
《いじめ動画の保護者説明会“録音データ”を入手》「『先生に言ったら倍返しになるから言わないで』と…」子供の不安を涙ながらに訴える保護者の悲痛な声【大分市】
NEWSポストセブン