◆NHKが掘る「巨大な穴」

 そうやって大きく新説を取り上げたNHKだが、一方でそれが“論争”を巻き起こす結果にもつながった。

 4月から始まり、現在は大阪歴史博物館に巡業している『2016年NHK大河ドラマ特別展「真田丸」』(9月17日~11月6日)の図録では、従来説を支持する立場から、出城説を真っ向から否定する論文が掲載されたのだ。大阪歴史博物館学芸員らの連名による論文では、出城説の根拠となった絵図などについて〈大坂の陣後、一定の年代を経て制作されたものであり、その姿は到底大坂の陣前の大坂城の姿と言い切ることはできない〉と結論づけているのだ。

 かくして「2つの真田丸」論争はNHKが両説を“公認”してしまったかたちとなり、関係者の間では、大河ドラマではどちらの説を採用するのか、と注目を集めるようになった。

『真田幸村』の著書もある歴史研究家で多摩大学客員教授の河合敦氏は真田丸の「かたち」がどう描かれるかで主人公・幸村の人物造形も変わってくると指摘する。

「私は独立した城だったという説を推しています。それは主戦派の幸村のキャラクターを考えると彼の築く城は攻めるためのものでないと駄目だからです。真田丸が単なる馬出しだったら攻めの城とはいえません。(脚本担当の)三谷幸喜さんも出城の説を取ると思いますよ。

 大坂城から分離・独立した場所に真田丸を築けば、それが陥落しても大坂城には迷惑をかけない。しかも敵は必ずこの目障りな真田丸を攻めてくる。そういう思いを出城型のほうが表現できるのではないか。簡単には逃げ帰ることができない背水の陣を敷いた、という見せ方もできる」

 NHKは大坂の陣を描くにあたり、真田丸のオープンセットを造成している。大河特集ホームページ「さなイチ」には重機を使って広大な土地に30メートル四方、深さ10メートルほどの巨大な穴を掘る様子が公開されている。

「大坂冬の陣で、幸村はたった3000の兵で、3万6000もの敵兵を迎え撃ったといわれています。戦いは市街戦で、大坂城下の狭い道に徳川勢を巧みに誘い込みます。大軍勢の徳川は狭い道で後退できずに空堀に次々と転落し、鉄砲方の狙い撃ちにあうのです。オープンセットの大穴は真田丸の周りに掘られた空堀でしょう。この形状から推測するに、出城説が採用されているんじゃないでしょうか」(前出・井手窪氏)

◆「場所は明かせない」

 NHK広報部に問い合わせると「オープンセットの場所は市町村も都道府県も明かせない。日本の土地ではある。私有地であり、撮影が終わればセットは片づける」という。出城説と従来説のどちらをとるかについては「ノーコメント」と答えた。

※週刊ポスト2016年11月4日号

関連記事

トピックス

全米野球記者協会ニューヨーク支部主催のアワードディナーに出席した大谷翔平と、妻・真美子さん(左/時事通信フォト、右/提供:soya0801_mlb)
《真美子さんが座る椅子の背もたれに腕を回し…》大谷翔平が信頼して妻を託す“日系通訳”の素性 “VIPルーム観戦にも同席”“距離が近い”
NEWSポストセブン
司法省がアンドリュー元王子の写真を公開した(写真/Getty Images)
《白シャツ女性に覆いかぶさるように…》エプスタイン・ファイルで新公開されたアンドリュー元王子とみられる人物の“近すぎる距離感の写真” 女性の体を触るカットも
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
【2・8総選挙「大阪1〜10区」の最新情勢】維新離党の前職が出た2区、維新前職vs自民元職vs野党候補の5区で「公明党票」はどう動くか
NEWSポストセブン
なぜ実の姉を自宅で監禁できたのか──
《“お前の足を切って渡すから足を出せ”50代姉を監禁・暴行》「インターホンを押しても出ない」「高級外車が2台」市川陽崇・奈美容疑者夫妻 “恐怖の二世帯住宅”への近隣証言
NEWSポストセブン
東京拘置所(時事通信フォト)
〈今年も一年、生きのびることができました〉前橋スナック銃乱射・小日向将人死刑囚が見せていた最後の姿「顔が腫れぼったく、精神も肉体もボロボロ」《死刑確定後16年で獄中死》
NEWSポストセブン
間違いだらけの議事録は「AIのせい」(写真提供/イメージマート)
《何でもAIに頼る人たち》会社員女性が告白「ケンカの後、彼から送られてきた”彼女の方が悪い”とAIが回答したスクショ」ほどなく破局
NEWSポストセブン
国際ジャーナリスト・落合信彦氏
国際ジャーナリスト・落合信彦氏が予見していた「アメリカが世界の警察官をやめる」「プーチン大統領暴走」の時代 世界の“悪夢”をここまで見通していた
NEWSポストセブン
高市早苗首相(時事通信フォト、2025年10月15日)
《頬がこけているようにも見える》高市早苗首相、働きぶりに心配の声「“休むのは甘え”のような感覚が拭えないのでは」【「働いて働いて」のルーツは元警察官の母親】 
NEWSポストセブン
ジェンダーレスモデルの井手上漠(23)
井手上漠(23)が港区・六本木のラウンジ店に出勤して「役作り」の現在…事務所が明かしたプロ意識と切り開く新境地
NEWSポストセブン
元日に結婚を発表した女優の長澤まさみ(時事通信フォト)
長澤まさみ「カナダ同伴」を決断させた「大親友女優」の存在…『SHOGUN』監督夫との新婚生活は“最高の環境”
NEWSポストセブン
国際ジャーナリスト・落合信彦氏
【訃報】国際ジャーナリスト・落合信彦氏が死去、84歳 独自の視点で国際政治・諜報の世界を活写 
NEWSポストセブン
薬物で急死した中国人インフルエンサー紅紅(左)と交際相手の林子晨容疑者(右)(インスタグラムより)
「口に靴下を詰め、カーテンで手を縛り付けて…」「意識不明の姿をハイ状態で撮影」中国人美女インフルエンサー(26)が薬物で急死、交際相手の男の“謎めいた行動”
NEWSポストセブン