国際情報

北朝鮮に渡った9万人の帰国者は最下層身分として潰された

ミサイル発射と核実験を繰り返す金正日 KCNA/新華社/AFLO

 1959年から始まった在日朝鮮人の北朝鮮帰国事業は、現在は北朝鮮に批判的な産経新聞も含んだ主要全紙が「美談」として報じたことで日本人をも巻き込んで大衆的な支持を得て9万人もの人が海を渡り「地上の楽園」へ向かった。しかし、1990年代中盤ごろから脱北者たちが帰国者の悲惨な実情を証言するようになり、実態が広く知られるところとなった。「デイリーNKジャパン」編集長の高英起氏が、当時、北朝鮮で来国者を待ち受けていた過酷な現実について解説する。

 * * *
 帰国者を待っていたのは、日本での宣伝とは大違いの貧困という現実と北朝鮮社会で最下層に位置づけられた差別だった。

 帰国者の多くは、北朝鮮における身分制度である出身成分(*)で最下層の「敵対階層」またはその上の「動揺階層」に分類され監視対象とされた。さらに、多くの帰国者が「望む仕事に就ける」と言われていたものの、実際には北朝鮮当局によって、一方的に配属先を決められた。独身の帰国者の場合は、帰国者同士でなければなかなか結婚できないという差別もあった。

【*金日成に対する忠誠度によって、国民を「核心階層」「動揺階層」「敵対階層」の3つに分類。動揺階層は状況次第で党に抵抗する可能性があるとして監視対象になり、敵対階層は党に否定的な態度をとるとされ、より厳しい特別監視対象になった】

 北朝鮮に帰国して帰国者同士で結婚したが、その後、一家で脱北、そして日本に再帰国した女性は語る。

「北朝鮮で高校を卒業して咸興工業大学に進み、卒業後は機械工場の設計室で仕事をしました。もうその頃には、見たり聞いたりしたことをそのまま口にしたら命が取られることがわかっていましたから、方向転換し、順応していこうとしました。1965年に結婚して地方に移り、5人の子どもを産み育てました。しかし配給では食べていくことができません。

 平壌では9割が米、1割が雑穀ですが、地方では秋には米が3割くらいに増えることはありましたが、通常は9割が雑穀で米は1割です。一番困るのが大豆。水にふやかして臼でついて調理しますが、2食これを食べると消化できず下痢。毎食だと神経もおかしくなっていきます」

 帰国者だからといって配給を少なくされることはなかったが、滞りがちな配給を優先的に回してもらうにはコネが必要だった。コネを持たない帰国者は結果的に食料の確保で苦労することとなる。

関連記事

トピックス

手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《産後とは思えない》真美子さん「背中がざっくり開いたドレスの着こなし」は努力の賜物…目撃されていた「白パーカー私服での外出姿」【大谷翔平と手繋ぎでレッドカーペット】
NEWSポストセブン
女優・遠野なぎこ(45)の自宅マンションで身元不明の遺体が見つかってから2週間が経とうとしている(Instagram/ブログより)
《遠野なぎこ宅で遺体発見》“特殊清掃のリアル”を専門家が明かす 自宅はエアコンがついておらず、昼間は40℃近くに…「熱中症で死亡した場合は大変です」
NEWSポストセブン
俳優やMCなど幅広い活躍をみせる松下奈緒
《相葉雅紀がトイレに入っていたら“ゴンゴンゴン”…》松下奈緒、共演者たちが明かした意外な素顔 MC、俳優として幅広い活躍ぶり、174cmの高身長も“強み”に
NEWSポストセブン
和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《白パーカー私服姿とは異なり…》真美子さんが1年ぶりにレッドカーペット登場、注目される“ラグジュアリーなパンツドレス姿”【大谷翔平がオールスターゲーム出場】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン