では、なぜ日本は財政破綻しないのか? 個人の借金であれば、返済期限が来たら厳しい取り立てがある。企業は2回不渡りを出したら倒産だ。
しかし国の場合は、すでに発行した国債の償還資金を調達するために借換(かりかえ)債を発行し、借金を先送りすることが可能になっている。闇金用語で言えば、利息だけ払って元金の返済を繰り延べする「ジャンプ」である。それをメガバンク、ゆうちょ銀行、生命保険会社、証券会社などが唯々諾々と受け入れているのだ。
そういう仕掛けによって日本は借金を増やし続けることができているわけだが、行け行けどんどんで失敗を認めず、最後は引き返せない泥沼に嵌まる……というのは、日中戦争から太平洋戦争へと破滅の道を突き進んだ、かつての日本政府・日本軍と同じではないか。
過去の戦争と現在の金融政策を同列に論じることに疑問を持つ読者もいるかもしれないが、あえて歴史を振り返れば、盧溝橋事件に始まった日中戦争は華北や上海、南京攻略でも終わらず、さらに奥地に入って泥沼化した。当初、日本軍は短期決戦で蒋介石の国民党政権に打撃を与えて講和を引き出す「対中一撃論」で臨んだが、国民党政権が屈服しなかったため、戦線が中国全土に拡大して長期戦を余儀なくされたのである。
今の日本も、安倍・黒田コンビで「国家総動員」ならぬ「政策総動員」のアベノミクスを展開したものの、的外れの政策ばかりだからほとんど効果が出ていない。
前述したように、黒田日銀は「2年で2%の物価上昇」という目標を未だに達成できず、ついには量的緩和から金利政策に切り替えて長期戦に突入した。異次元金融緩和の期間はすでに3年半を超え、太平洋戦争の3年9か月より長引くのは確実だ。しかし日銀は当時の大本営と同じく、自分たちの失策は一切認めていない。
※週刊ポスト2016年11月18日号