大戸屋は昨年7月より築地直送の鮮魚メニューなど、1000円を超える高単価メニューを定番に加え、客単価を865円まで伸ばした。これにより高騰する仕入れコストや人件費にも対応してきたのだが、その一方で客数を減らし続ける結果を招いた。
「そもそも大戸屋はランチでも税込み699円するうえ、高単価メニューを増やしたことで値段が高いというイメージがますます強くなってしまったことは確かです。
ファミレスなどで“チョイ高メニュー”が売れた2年前だったらよかったのでしょうが、いまはサラリーマンの給料が思ったように上がらず、節約志向は明らか。他の外食チェーンでは500円台で充実した定食を出すところはありますし、夜の飲み代も2000円を超えると高いと思われるほど財布のヒモが固い時代に、大戸屋の価格戦略が今後も通用するかは疑問です」(前出・重盛氏)
窪田社長は1000円を超えるメニューを全面に出し過ぎてしまったことは反省しつつも、700円~800円台の客単価を極端に下げる低価格メニューを揃える構えはないと強気だ。「大戸屋は牛丼チェーンのように価格を上げたとか下げたという業態とは違う。価格にはあまり興味がない」とまで言い切った。
しかし、長年大戸屋を利用している顧客からは、こんな指摘も出る。
「大戸屋といえば、ボリュームがあって安くて美味しいところが好きだったのに、最近は同じ料理でも値段が上がった分、満足感は減りました。
また、1日数十食限定などで値段の高いメニューも増えましたが、そこまでお金を払うなら他の外食店で食べるのと変わらない。どこにでもある家庭の味が気軽に食べられる“庶民感覚”の定食屋さんというイメージが薄れてきているのが残念です」(大戸屋歴10年の30代女性)
内紛による経営の不安定化が長引き、無理な事業拡大や商品開発が裏目に出続ければ、それこそ創業者が築いてきた大戸屋ブランドの継承は果たせなくなるだろう。