ライフ

末期癌の医師・僧侶の天台小止観「止は禅定、観は知恵」とは

医師・僧侶の田中雅博氏

 2014年10月に最も進んだステージのすい臓がんが発見され、余命数か月であることを自覚している医師・僧侶の田中雅博氏による『週刊ポスト』での連載「いのちの苦しみが消える古典のことば」から、天台小止観の「止は禅定、観は知恵」の解釈を田中氏が解説する。

 * * *
 20年と少し前、天台宗の阿闍梨が、命懸けで、私に止観(仏教のヨーガ)の指導をして下さいました。阿闍梨といっても山の中を歩き続けた方という意味ではありません。「蟻の街」というバタヤ部落(終戦後、廃品回収業に従事する人々が暮らした地区、集落をこう呼んだ)で貧困に苦しむ人々を救うために、苦しむ者と同じ姿に変身する観音菩薩を見倣って、屑拾いとなった松居桃樓師です。

 言問橋の袂、東京大空襲後の焼け野原の跡に「蟻の街」ができました。屑拾いで生活し、ときに泥棒をする人もいたようです。泥棒した人を警察署に引き受けに行っていた松居先生は、天台宗の『法華経』でそのような人々を救おうと決心されたそうです。

 観音菩薩のように相手と同じ姿になって、一緒に屑拾いをし、必要であれば泥棒もする覚悟をされたのです(fumon.or.jp『蟻の街の奇跡』参照)。その後、蟻の街は見事に自立して、数年後には東京都から埋立地を買い上げて移転しました。

 その松居桃樓師は晩年、まさに命が尽きようとするとき、担当医の制止を振りきって救急車で私達の普門院診療所に転院されました。死に場所として観音菩薩の札所である益子の西明寺を選ばれ、住職の私に天台止観の極意を面授して下さったのだと思っています。

 蟻の街で松居師を補佐した田所静枝さんが付き添って来られました。彼女は、松居師が『小止観物語』を著された縁で、蟻の街から東京・台東区の寛永寺に通って、二宮守人大僧正の指導のもと『天台小止観』の原文と読み下し文を出版されました。

関連記事

トピックス

ネックレスを着けた大谷がハワイの不動産関係者の投稿に(共同通信)
《ハワイでネックレスを合わせて》大谷翔平の“垢抜け”は「真美子さんとの出会い」以降に…オフシーズンに目撃された「さりげないオシャレ」
NEWSポストセブン
今の巨人に必要なのは?(阿部慎之助・監督)
巨人・阿部慎之助監督「契約最終年」の険しい道 坂本や丸の復活よりも「脅かす若手の覚醒がないとAクラスの上位争いは厳しい」とOBが指摘
週刊ポスト
大谷翔平(写真/アフロ)
大谷翔平、不動産業者のSNSに短パン&サンダル姿で登場、ハワイの高級リゾードをめぐる訴訟は泥沼化でも余裕の笑み「それでもハワイがいい」 
女性セブン
中居正広氏の近況は(時事通信フォト)
《再スタート準備》中居正広氏が進める「違約金返済」、今も売却せず所有し続ける「亡き父にプレゼントしたマンション」…長兄は直撃に言葉少な
NEWSポストセブン
不倫報道の渦中にいる永野芽郁
《ベリーショートのフェミニスト役で復活》永野芽郁が演じる「性に開放的な女性ヒロイン役」で清純派脱却か…本人がこだわった“女優としての復帰”と“ケジメ”
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の一足早い「お正月」》司組長が盃を飲み干した「組長8人との盃儀式」の全貌 50名以上の警察が日の出前から熱視線
NEWSポストセブン
垂秀夫・前駐中国大使へ「中国の盗聴工作」が発覚(時事通信フォト)
《スクープ》前駐中国大使に仕掛けた中国の盗聴工作 舞台となった北京の日本料理店経営者が証言 機密指定の情報のはずが当の大使が暴露、大騒動の一部始終
週刊ポスト
タレントとして、さまざまなジャンルで活躍をするギャル曽根
芸人もアイドルも“食う”ギャル曽根の凄み なぜ大食い女王から「最強の女性タレント」に進化できたのか
NEWSポストセブン
新恋人A氏と交際していることがわかった安達祐実
安達祐実、NHK敏腕プロデューサーと「ファミリー向けマンション」半同棲で描く“将来設計” 局内で広がりつつある新恋人の「呼び名」
NEWSポストセブン
還暦を迎えられた秋篠宮さま(時事通信フォト)
《車の中でモクモクと…》秋篠宮さまの“ルール違反”疑う声に宮内庁が回答 紀子さまが心配した「夫のタバコ事情」
NEWSポストセブン
熱愛が報じられた長谷川京子
《磨きがかかる胸元》長谷川京子(47)、熱愛報道の“イケメン紳士”は「7歳下の慶應ボーイ」でアパレル会社を経営 タクシー内キスのカレとは破局か
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」新年特大号発売! 紅白激震!未成年アイドルの深夜密会ほか
「週刊ポスト」新年特大号発売! 紅白激震!未成年アイドルの深夜密会ほか
NEWSポストセブン