芸能

松平健 スターになっても続いた勝新太郎との師弟関係

勝新太郎との思い出を語る松平健

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、デビューし一本立ちしてからも続いた勝新太郎との師弟関係の思い出を語った言葉からお届けする。

 * * *
 京都で勝新太郎の付き人をしていた松平健は1975年、初めて本格的な大役につく。それがテレビシリーズ『座頭市物語』(フジテレビ)の第23話「心中あいや節」。主演はもちろん、監督も師である勝が務めた。相手役は浅丘ルリ子である。

「『今度、お前を出させるから』と勝先生に言われまして。いやあ、嬉しかったですね。会社の人たちは『そんな新人を』と反対したようです。そこを勝先生が押し通してくれたんです。

 勝先生はいつも『台本なんかいらねえ』『セリフは覚えてこなくていいぞ』とおっしゃって、現場でセリフをつけていました。『こういう時、お前は何て言う?』と相手に聞きながら。でも、この時は『お前、ちゃんとセリフを覚えてこいよ』と言われまして。撮影の前の日にはホテルの部屋に呼ばれて、翌日に撮るシーンのリハーサルです。『何シーン目を撮るから、そっちから入ってこい』とか『目をキョロキョロさせるな』とか。

 現場での勝先生は、どのカットも凄く目一杯に撮ります。雪の上を歩く足の裏とか、一つ一つの画に細かく指示をしながら、大事に撮っていました。流すというか、軽く撮ることはありませんでした。演技も、まずはご自分が見本をやってくださる。それでもできない時は、手取り足取り教えてくださいました」

 その後、松平はスターになるが、師弟関係はずっと続いた。

「一本立ちしてからも、舞台稽古にはいつも来てくださいました。その時も、ダメだしが届きました。覚えているのは、『花道を去る時は揚げ幕の向こうに針の穴があると想像して、それを見ながら幕の中に入っていけ』というお言葉です。小さい穴を見ると、気持ちが集中するじゃないですか。それを舞台から去るまでずっと続けていくんだ、ということです。

『王様と私』というミュージカルをした時だけはダメだしはありませんでした。最後は泣いていました。そんなことはそれ以前も以後もありません。ただ、先生が亡くなってから奥さんの中村玉緒さんと食事させていただくと、『家では勝は《松平、あいつはよくなってきた》という話をしていたのよ』ということを教えていただきました」

関連記事

トピックス

TOKIOの国分太一(右/時事通信フォトより)
《あだ名はジャニーズの風紀委員》無期限活動休止・国分太一の“イジリ系素顔”「しっかりしている分、怒ると“ネチネチ系”で…」 “セクハラに該当”との情報も
NEWSポストセブン
月9ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』主演の中井貴一と小泉今日子
今春最大の話題作『最後から二番目の恋』最終話で見届けたい3つの着地点 “続・続・続編”の可能性は? 
NEWSポストセブン
『ザ!鉄腕!DASH!!』降板が決まったTOKIOの国分太一
《どうなる“新宿DASH”》「春先から見かけない」「撮影の頻度が激減して…」国分太一の名物コーナーのロケ現場に起きていた“異変”【鉄腕DASHを降板】
NEWSポストセブン
日本のエースとして君臨した“マエケン”こと前田健太投手(本人のインスタグラムより)
《途絶えたSNS更新》前田健太投手、元女子アナ妻が緊急渡米の目的「カラオケやラーメン…日本での生活を満喫」から一転 32枚の大量写真に込められた意味
NEWSポストセブン
出廷した水原被告(右は妻とともに住んでいたニューポートビーチの自宅)
《水原一平がついに収監》最愛の妻・Aさんが姿を消した…「両親を亡くし、家族は一平さんだけ」刑務所行きの夫を待ち受ける「囚人同士の性的嫌がらせ」
NEWSポストセブン
中世史研究者の本郷恵子氏(本人提供)
【「愛子天皇」の誕生を願う有識者が提言】中世史研究者・本郷恵子氏「旧皇族男子の養子案は女性皇族の“使い捨て”につながる」
週刊ポスト
夫・井上康生の不倫報道から2年(左・HPより)
《柔道・井上康生の黒帯バスローブ不倫報道から2年》妻・東原亜希の選択した沈黙の「返し技」、夫は国際柔道連盟の新理事に就任の大出世
NEWSポストセブン
新潟で農業を学ことを宣言したローラ
《現地徹底取材》本名「佐藤えり」公開のローラが始めたニッポンの農業への“本気度”「黒のショートパンツをはいて、すごくスタイルが良くて」目撃した女性が証言
NEWSポストセブン
妻とは2015年に結婚した国分太一
《セクハラに該当する行為》TOKIO・国分太一、元テレビ局員の年下妻への“裏切り”「調子に乗るなと言ってくれる」存在
NEWSポストセブン
1985年春、ハワイにて。ファースト写真集撮影時
《突然の訃報に「我慢してください」》“芸能界の父”が明かした中山美穂さんの最期、「警察から帰された美穂との対面」と検死の結果
NEWSポストセブン
無期限の活動休止を発表した国分太一
「給料もらっているんだからさ〜」国分太一、若手スタッフが気遣った“良かれと思って”発言 副社長としては「即レス・フッ軽」で業界関係者から高評価
NEWSポストセブン
ブラジル訪問を終えられた佳子さま(時事通信フォト)
《クッキーにケーキ、ゼリー菓子を…》佳子さま、ブラジル国内線のエコノミー席に居合わせた乗客が明かした機内での様子
NEWSポストセブン