今はかつての財政投融資のように政府の投資に頼る時代ではない。長期的には産業を淘汰して新陳代謝を促す政策を取るべきだ。個人レベルでも自分のセンスで投資や起業するダイナミズムが必要とされている。
しかし天下り団体の既得権益を守りたいがゆえの規制も多く障害となっている。増税も慣例主義の官僚たちが、これまで先輩が築き上げた路線を否定できなくなっているのではないか。または財務省がすでに機能不全に陥っているとしか思えない。そんな無駄は今すぐ排除すべきだ。
官僚や一部の日本経済悲観論者は自分らは現実主義だと胸を張る。しかし彼らは悲観論を目指す理想論者・非現実主義とも言える。
世界一の金融資産大国であるのにその資産を活かさない現実から目を背けていることこそ、「日本は危ない」のではないだろうか。
今の日本にはIT、外食分野を中心に、規制に縛られず、ビジネスチャンスを海外に見出している成長分野の企業も少なくない。政府が既得権に固執する成長性のない産業から別の分野に潤沢な資金をシフトできれば、日本経済はさらに強固なものとなるだろう。
【PROFILE】じょうねん・つかさ1969年、東京生まれ。中央大学法学部法律学科卒業。2007年、勝間和代氏と株式会社「監査と分析」を設立。著書に『財務省と大新聞が隠す 本当は世界一の日本経済』(講談社+α新書)、『経済で読み解く明治維新』(ベストセラーズ)など多数。
※SAPIO2016年12月号