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画期的な脳梗塞の血管内治療 最大利点は猶予時間の延長

「もう少し早ければ」の悲劇が減少か(イメージ)

 都内に住む50代男性が肩を震わせて振り返る。

「2年前、帰宅した母が脳梗塞を発症して倒れていた父を見つけました。すぐ病院に搬送しましたが、すでに倒れてから5時間近く経っていた。手遅れで治療ができず、そのまま父は他界しました。医師から“もう30分早く発見できていれば……”と言われて、母は泣き崩れていました」

 年間約6万6000人もの命を奪う脳梗塞。運命を分けるのは「時間」だ。聖マリアンナ医科大学東横病院脳卒中センターの植田敏浩センター長がいう。

「脳梗塞の患者は突然、倒れるため、近隣の病院に運びこまれるケースが大半です。この時、治療の開始が早ければ早いほど、患者が完全に回復する可能性が高くなります。治療を受けるまでの1分1秒がその後を大きく左右するのです」

 冒頭の事例のように、脳梗塞は発見が遅れると治療が間に合わず、遺族がいつまでも後悔する結果となることが少なくない。

 だが近年、画期的な新治療法が登場した。それが、「血管内治療」である。この治療を受ければ、患者の回復率が劇的に向上する。兵庫医科大学脳神経外科教授の吉村紳一氏がいう。

「今年発表された世界規模の研究では、通常の内科的治療に『血管内治療』を加えると、脳梗塞発症後に患者が自宅に戻ることができる確率が20%向上し、さらに社会復帰できる確率も14%高まった。この治療を施せば、多くの人命とQOL(生活の質)を維持できる」

 だが、この治療法には思わぬ「誤算」があった。吉村氏が理事を務める日本脳神経血管内治療学会は、血管内治療を行なう全国約150の施設に対して、各々がどれだけのエリアをカバーしているかのアンケートを行なった。

「直接の搬送だけでなく、他の医療機関からの患者の転送や医師の出張診察まで含めて、施設ごとの受け持ちエリアを調べました。その結果、『県内全域をカバーしている』と答えたのは鳥取と石川の医療機関だけでした。その他の地方はもちろん、東京、大阪などの大都市でも、血管内治療を受けられないエリアが数多くあった」(同前)

 そこで吉村氏らは全国の血管内治療を行なう専門医の数を調べて、「専門医配置マップ」を作成した。本誌はそれを基に専門医のいる市区町村を独自に集計した。

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