芸能

朝ドラ『べっぴんさん』はなぜあれほど遅くて暗いのか

ヒロイン坂東すみれ役を務める芳根京子

 数字の上でも堅調でも、内容への評価となると微妙な部分があるようだ。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所の山下柚実氏が、話題の朝ドラについて指摘する。

 * * *
 NHK連続テレビ小説『べっぴんさん』がスタートして2か月。すでに全体の3分の1が経過しました。平均視聴率は20%超。今週は自己最高の数字も叩き出し、安定飛行中と言えるでしょう。では、その評判は……。

「前作のように自己主張が過ぎたり、奇をてらうことがない」「しっとり落ち着いている」「登場人物が自然体」と肯定的な感想がある一方で、ヒロイン板東すみれ役・芳根京子さんの演技に「メリハリが無い」「表情が乏しい」といった辛口評も目立つ。

 話の進展についても、「モタモタして遅い」「全体的に画面が暗い」といった厳しい感想が。

 私自身、物語のモデルとなった子供服の草分け的メーカーのファン。スタート時から期待して見続けてきました。が、2ヶ月が過ぎる頃どうにも「暗さ」が耐えられなくなってきた一人。朝、このドラマに触れることで心のどこかが暗いトーンに染まっていくような、重たくなるような。であれば、敢えて毎日、積極的に見ようと思えなくなって……。

 この「暗さ」の原因は、いったいどこにあるのでしょうか? 演出、脚本、構成の3つの点から考えてみると──。

●演出の意図とは?

「ヒロインの表情が乏しい、暗い」という点は、たしかにそうだと思います。しかしそれは芳根京子さんのせいというよりも、演出による影響が大きいはず。主人公すみれの、ちょっと引っ込み思案な性格と、スローで沈んだ画面とが響き合っているのです。

 演出の影響について一番わかりやすい例をあげるとすれば、アイドルグループ・ももいろクローバーZの百田夏菜子さんが演じている、良子という人物でしょう。 ご存じのように、ももクロの百田さんはキャピキャピと明るく、はしゃぐイメージ、元気な女の子。しかしこのドラマの中の良子は、とにかくものすごく暗くてドヨーンとしている。悩んで下を向いている。

 一人の百田さんが、光と影のように変化しているのです。こうも「別人」のように見えるとはちょっと驚きですが、まさにそれこそが「演出の力」でしょう。

 役者は演出によって、まったく違うイメージになる、ということ。もちろん、演出家の意向を実現させる演技力が役者にあってのことですが。

 つまり、このドラマから「暗さ」を感じるのは、演出による意図、と言えるのではないでしょうか。

関連記事

トピックス

水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
大ヒットしたスラムダンク劇場版。10-FEET(左からKOUICHI、TAKUMA、NAOKI)の「第ゼロ感」も知らない人はいないほど大ヒット
《緊迫の紅白歌合戦》スラダン主題歌『10-FEET』の「中指を立てるパフォーマンス」にNHKが“絶対にするなよ”と念押しの理由
NEWSポストセブン
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン