大統領邸の近くではドゥテルテグッズが販売されている
大統領は今でも、市長時代から通っていた自宅近くの簡易食堂に足を運んでいるというが、そこで提供されているフィリピン料理一品当たりの価格は25~35ペソ(約50~70円)。「麻薬密売犯を殺す!」「オバマ大統領は地獄に落ちろ!」などと暴言を吐く大統領の強面イメージとは裏腹に、ふたを開けてみれば実に質素な生活ぶりである。
指導者としての有言実行な姿勢に加え、歴代大統領には見られないこの庶民感覚が国民の共感を呼び、大統領との距離感を縮めている。日本流に言えば「地下アイドル」的な要素が、絶大な支持を集める要因になっているのだ。
ちなみに大統領が市長時代から乗り回していたハーレーダビッドソン社製のような大型バイクは、自宅前の駐車場に駐まっているが、実は日本製だった。テレビなどの電化製品も日本製を好んで購入しているという。
【PROFILE】水谷竹秀●1975年三重県桑名市生まれ。上智大学外国語学部卒業。現在フィリピンを拠点にノンフィクションライターとして活動中。2011年『日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」』で開高健賞受賞。近著に『脱出老人 フィリピン移住に最後の人生を賭ける日本人たち』。
※SAPIO2017年1月号