芸能

さだまさし 永六輔のバトンを繋いでいくのが自分の使命

永六輔さんとの対談集を出版したさだまさし

『関白宣言』『案山子』など有名な曲は数知れず。NHKの不定期深夜番組『生さだ』では軽妙なトークとともに番組を盛り上げる。デビューから40年以上経った現在でも精力的に活動を続けるさだまさし。10月に発生した鳥取県中部地震の被災地への慰問から、鳥取から放送した『生さだ』の舞台裏まで密着した。

 鳥取県中部を襲った震災からおよそ1か月…その爪痕を残すブルーシートはまだ、あちこちに残っているものの、「あらっ、だれかと思ったら!」、「テレビで見るより、いい男だねぇ」…あっちからも、こっちからもかかるはずんだ声に、「でしょう!?」と、被災地を歩くさだまさしの顔にも笑みがこぼれた。

「鳥取にはグレープ時代から思い出がいっぱいあって。そこが被災したと聞いて、とにかくまず行かなきゃと。ぼくら歌い手にできるのは、一緒に泣くことと、応援すること、歌でみなさんを元気づけることくらいですから。今回はそれにプラスして、ほんの少しですけど、全国のみなさんからお預かりした支援金をお届けにきたんです」

 2015年夏、さだが中心になって設立された「一般財団法人 風に立つライオン基金」――ささやかで偉大な活動を行う人を応援するために、災害で苦しむ人たちのために、小さいけれど、目に見えるカタチで支援するためのプラットフォーム。そこには、“ぼくたちは忘れていませんからね!”という強いメッセージが込められている。

「だって、人間にとっていちばん悲しいのは、忘れられてしまうことだから…」

 十重二十重に人が溢れ、20分遅れではじまった倉吉市上灘小学校体育館での「さだまさし被災地とっとりコンサート~がんばれ鳥取中部~」。控室として用意された校長室で、さだは、ぽつんとつぶやいた。

「でもこれは、永六輔さんに教わったことなんですけどね」

 さだまさしと永六輔さん――2人の関係は、さだがまだデビューする前、40年以上も前に遡る。

「最初の頃、どこでどう間違えたのか、永さんはぼくのことを落語家をめざしていると思っていたらしくて(苦笑)。でもほんと、人としての生き方から、知識や知見、ものづくりのノウハウまで、いろんなことを教えていただき、それが今、ぼくの財産になっているんです」

 その永六輔さんから手渡されたバトンを次の世代につなぐために、さだは、2つの作品を世に送り出した。1つは、この日の深夜、NHK鳥取放送局から生放送された『今夜も生でさだまさし』(NHK総合テレビ)のオープニングで歌った『上を向いて歩こう』など、永六輔さん作詞の歌をカバーしたアルバム『永録 ~さだまさし 永六輔を歌う~』(ユーキャン)。

 そしてもう1つが、永六輔さん最後の対談集『笑って、泣いて、考えて。永六輔の尽きない話』(小学館)だ。

「その永さんがぼくに言ったんですよ。いいか、まさし、人間は2度死ぬ。まず死んだ時。それから忘れられた時だって。だから、永さんという偉大な人が遺した作品や魂のバトンを次の世代につないでいくことがぼくの使命なんだと思うんです」

 体育館の床に敷かれたゴザの上で、肩を並べて一緒に歌う50代のご夫婦。感極まり涙をこぼすお年寄り。コンサートそっちのけで走り回る子供たち…。『案山子』から『Birthday』『無縁坂』『秋桜』『吾亦紅』と続き、『関白失脚』で、さだが、サビの“がんばれ、がんばれ、がんばれ”を、“がんばれ、倉吉、がんばれ”と歌うと、会場中が一緒になって、“がんばれ”の大合唱。

 永さんからさだに、そして、さだからみんなに――手渡されたバトンを天高く掲げたその顔には、笑顔がはじけていた。

※女性セブン2017年1月1日号

関連記事

トピックス

高市早苗首相(時事通信フォト)
《日中外交で露呈》安倍元首相にあって高市首相になかったもの…親中派不在で盛り上がる自民党内「支持率はもっと上がる」
NEWSポストセブン
阿部なつき(C)Go Nagai/Dynamic Planning‐DMM
“令和の峰不二子”こと9頭身グラドル・阿部なつき「リアル・キューティーハニー」に挑戦の心境語る 「明るくて素直でポジティブなところと、お尻が小さめなところが似てるかも」
週刊ポスト
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
「現地の中国人たちは冷めて見ている人がほとんど」日中関係に緊張高まるも…日本人駐在員が明かしたリアルな反応
NEWSポストセブン
大谷翔平が次のWBC出場へ 真美子さんの帰国は実現するのか(左・時事通信フォト)
《大谷翔平選手交えたLINEグループでやりとりも》真美子さん、産後対面できていないラガーマン兄は九州に…日本帰国のタイミングは
NEWSポストセブン
11月24日0時半ごろ、東京都足立区梅島の国道でひき逃げ事故が発生した(現場写真/読者提供)
【“分厚い黒ジャケット男” の映像入手】「AED持ってきて!」2人死亡・足立暴走男が犯行直前に見せた“奇妙な”行動
NEWSポストセブン
10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン