■トキメキ成分が足りなくなってきて……
結婚願望はそれほど強くなかったものの、子供は欲しいと思っていましたし、父に孫を見せてあげたいという気持ちがありました。そのためにはやっぱり結婚かなぁと思い始めたのが30歳を過ぎた頃です。「桜子ならシングルでも育てられるよ。結婚にこだわらず、好きな男の子供を産んじゃえばいいじゃん」って、よく友達に言われたのですが、できるなら、子供は二人で育てたいと思ったんです。そのほうが、子供にとっていいんじゃないかと。母を早くに亡くしたせいもあるかもしれません。
31歳のときに仕事で出会った人を大好きになって、2年くらい猛アタックして、33歳で付き合い始めたんです。彼も同い歳だったから、付き合って1年経つころには「結婚」が話題にのぼるようになり、2人ともそのつもりでした。35歳までには結婚しよう、子供はできれば3人ほしいよねと。穏やかで平和な日々でした。ただ、そうなってくると、トキメキ成分が足りなくなってくるのが私の悪いクセで……。
34歳の冬、まとまった休みがとれたので、久々にパリに出かけたんです。サクラコが帰って来たと、ちょっとした同窓会が開かれました。そこで、約20年ぶりに再会したフランス人の同級生の一人が、ばっちり私の好みに変貌していたんです。えっ、こんなヤツだっったけ? と。パリでインテリアの仕事をしているという彼とは話も合って、猛アタックされてしまいました。
自分から言い寄ることはあっても、言い寄られることの少なかった私は、大いに心が乱されてしまって。1週間の旅行でしたが、日本に帰ってからも、この同級生のことで頭がいっぱい。毎日電話をし、メールをし、次、いつパリに行けるだろうって計画ばかり立てていました。
そんな状態ですから、パリで何かあったな、と彼氏も気づいたようでした。でも私たちは2年近く付き合っていましたし、結婚の約束もしている仲。熱しやすい私の性格も知ってるからか、しばらく、見て見ぬふりをしてくれたんです。でも皮肉なことに、彼の大人な対応が、私の気持ちをフランス人へと加速させてしまいました。身勝手を承知で言わせてもらうと、怒ってほしかったし、気持ちをぶつけてほしかった。嫉妬してほしかった。それだけの愛情や執着が私に対してなかった、ということなのかもしれませんが。