ライフ

【書評】平家物語、栄華を極めても最後は滅亡することを知る

 年末年始はじっくりと本を読む良いチャンスだが、本読みの達人が選ぶ書は何か。作家の嵐山光三郎氏は、歴史物語を読み解く書として『謹訳 平家物語[一]~[四]』(林望・著/祥伝社/1600~1800円+税)を推す。嵐山氏が同書を解説する。

 * * *
 祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰のことはりをあらはす……と巻頭だけは知られている『平家物語』だが、その中味はだれも知らないお話を、わかりやすくリンボウ先生が現代語訳した。

 飛ぶ鳥を落とす勢いがあった平家一族の滅亡を、琵琶法師という演者が弾き語る歴史物語である。祇園の寺には無常堂という病気の僧のためのお堂があり、そこの鐘の音を聞き、いかほど栄華を極めた人でも、最後は滅亡してしまうことを知る。

 リンボウ先生は落語や講談本も読んで、名調子で語りおろす。したがって、声を出して音読すると「活きたお話」がつぎつぎと飛び出す。第一巻(「祇園精舎」から五十二話)、第二巻(「厳島御幸」から四十二話)、第三巻(「清水冠者」から五十一話)、第四巻(「首渡」から四十九話)まで、独立した歴史短編エピソードが入っている。

 どこから読んでも面白く、人情話あり、活劇あり、笑いあり、で一気に読めます。一巻では、清盛が寵愛した遊女「祇王」の悲話、二巻は人妻を殺害した荒法師「文覚荒行」、三巻は木曾義仲が平家軍勢をうち負かす「倶利迦羅落」、第四巻は弓の名人「那須与一」、「壇浦合戦」が痛快。

 源平のスターたちが勢ぞろいして、暴れまわる。平清盛は悪者に見られがちだがじつは人情家で、若き頼朝や義経の命を助けるが、それが仇となって亡ぼされてしまう。平家よりも源氏のほうが残虐で執念深いこともわかる。歴史は、こういったエピソードによって活写されてきた。

 ぼくらの世代は「歴史のお話」集を学んできたから、日本中どこへ行っても史跡になじむことができる。ということで、東京・日比谷図書文化会館で、リンボウ先生の『平家物語』朗読(ローローと読んでうまい)と、嵐山との熱血対談講演会をやりました。

 ホールはレキジョ(歴史愛好女子)が超満員で、熱気ムンムンでした。二〇一七年も「盛者必衰」ですからね。

※週刊ポスト2017年1月1・6日号

関連記事

トピックス

試練を迎えた大谷翔平と真美子夫人 (写真/共同通信社)
《大谷翔平、結婚2年目の試練》信頼する代理人が提訴され強いショックを受けた真美子さん 育児に戸惑いチームの夫人会も不参加で孤独感 
女性セブン
海外から違法サプリメントを持ち込んだ疑いにかけられている新浪剛史氏(時事通信フォト)
《新浪剛史氏は潔白を主張》 “違法サプリ”送った「知人女性」の素性「国民的女優も通うマッサージ店を経営」「水素水コラムを40回近く連載」 警察は捜査を継続中
NEWSポストセブン
ヒロイン・のぶ(今田美桜)の妹・蘭子を演じる河合優実(時事通信フォト)
『あんぱん』蘭子を演じる河合優実が放つ“凄まじい色気” 「生々しく、圧倒された」と共演者も惹き込まれる〈いよいよクライマックス〉
週刊ポスト
石橋貴明の現在(2025年8月)
《ホッソリ姿の現在》石橋貴明(63)が前向きにがん闘病…『細かすぎて』放送見送りのウラで周囲が感じた“復帰意欲”
NEWSポストセブン
決死の議会解散となった田久保眞紀・伊東市長(共同通信)
「市長派が7人受からないとチェックメイト」決死の議会解散で伊東市長・田久保氏が狙う“生き残りルート” 一部の支援者は”田久保離れ”「『参政党に相談しよう』と言い出す人も」
NEWSポストセブン
ヘアメイク女性と同棲が報じられた坂口健太郎と、親密な関係性だったという永野芽郁
「ずっと覚えているんだろうなって…」坂口健太郎と熱愛発覚の永野芽郁、かつて匂わせていた“ゼロ距離”ムーブ
NEWSポストセブン
新潟県小千谷市を訪問された愛子さま(2025年9月8日、撮影/JMPA) 
《初めての新潟でスマイル》愛子さま、新潟県中越地震の被災地を訪問 癒やしの笑顔で住民と交流、熱心に防災を学ぶお姿も 
女性セブン
羽生結弦の被災地アイスショーでパワハラ騒動が起きていた(写真/アフロ)
【スクープ】羽生結弦の被災地アイスショーでパワハラ告発騒動 “恩人”による公演スタッフへの“強い当たり”が問題に 主催する日テレが調査を実施 
女性セブン
自民党総裁選有力候補の小泉進次郎氏(時事通信フォト)
《自民党総裁選有力候補の小泉進次郎氏》政治と距離を置いてきた妻・滝川クリステルの変化、服装に込められた“首相夫人”への思い 
女性セブン
ヘアメイク女性と同棲が報じられた坂口健太郎と、親密な関係性だったという永野芽郁
《初共演で懐いて》坂口健太郎と永野芽郁、ふたりで“グラスを重ねた夜”に…「めい」「けん兄」と呼び合う関係に見られた変化
NEWSポストセブン
千葉県警察本部庁舎(時事通信フォト)
刑務所内で同部屋の受刑者を殺害した無期懲役囚 有罪判決受けた性的暴行事件で練っていた“おぞましい計画”
NEWSポストセブン
2泊3日の日程で新潟県を訪問された愛子さま(2025年9月8日、撮影/JMPA)
《雅子さまが23年前に使用されたバッグも》愛子さま、新潟県のご公務で披露した“母親譲り”コーデ 小物使い、オールホワイトコーデなども
NEWSポストセブン