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2016.12.29 16:00  NEWSポストセブン

21世紀の大作にはない、愛すべき無駄を描く映画の心地よさ

 この無駄のない味気ない世界は、どこかで見たような気がしないだろうか。相手の話を聞かず、一方的に言いつのるばかりの「ネット論争」の世界だ。本来、コミュニケーションというのはお互いの話を無駄なものも含めてやりとりし、積み上げてゆくものだ。そして、やりとりの大半は煙のように浮かんでは消えるものだったはずだ。

 ところが、たわいないつぶやきがいつまでも残るネットの世界では、大して意味なく発した言葉までひとつひとつ記録され、あげつらわれることが少なくない。

『スモーク』公開初日、恵比寿ガーデンシネマで行われたトークショーで、映画字幕翻訳者の戸田奈津子氏は「21世紀の映画には、ついていけないの」と冗談交じりに本音を漏らした。戸田氏のいう「ついていけない」は、無駄がない映画ばかりでは楽しくないという意味だったのではないか。

 1990年の夏からクリスマスにかけての約半年の間を描くこの物語には、心地よい無駄がたくさん詰まっている。絶妙な間合いで交わされる普段のおしゃべりによって、まるで自分も隣人になったかのような気持ちになれる。クリスマスからお正月にかけての映画といえば、世界的大ヒットを狙う21世紀的な大作がずらりと並ぶが、『スモーク』を選んで観る人が少なくないのは、愛すべき無駄がたくさん詰まっているからだろう。

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