ライフ

NHK大河・井伊直虎 鬼籍に入って初めて女性の幸せ掴んだ

井伊家の菩提寺、龍潭寺の開山堂の前に立つ松平定知氏

 2017年のNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』の主人公は井伊直虎だ。井伊家といえば彦根藩を思い浮かべる人も多いが、直虎が拠点としたのは、井伊家発祥の地でもある井伊谷という地域。現在の静岡県浜松市北部に残る直虎ゆかりの場所と直虎の人物像を歴史通で知られる元NHKアナウンサー・松平定知氏の案内で紹介する(談/松平定知)。

 * * *
 江戸末期、幕府大老として開国政策を断行した第15代彦根藩主、井伊直弼(なおすけ)。初代藩主直政は家康を支えて徳川政権樹立に貢献し、「徳川四天王」筆頭格と讃えられた。時代の変革期にかくも大きな役割を果たした井伊家は、実は断絶の危機に瀕したことがあり、それを救ったのが「おんな城主」直虎だ。

 時は戦国、井伊家は有力大名今川氏の重臣で、遠江国引佐郡井伊谷(とおとうみのくにいなさぐんいいのや/現在の浜松市北区引佐町井伊谷)の領主。その第22代当主直盛の一人娘として直虎は生まれた。生年、幼名は不詳だ。

 男子が生まれず、宗家が途絶えてしまうため、直盛は、その叔父直満の長男直親を直虎の許婚として家に迎えた。直親9歳のときである。ちなみにこのアイデアを考えたのは、直虎の祖父の弟、すなわち大叔父で、井伊家の菩提寺龍潭寺の住職となっていた南渓和尚。彼は井伊家の知恵袋で、井伊家が危機を迎えるたびに乗り越えるための策を編み出した。

 ところが、直満と不仲だった井伊家の家老小野政直が、直親が宗家の跡取りになることに反対し、なんと「直満と(その弟の)直義が謀反を起こそうとしている」と今川義元に讒言。それを信じた義元により、直満、直義は自刃させられてしまう。天文13(1544)年のことだ。直親にも累が及ぶのではないか──それを恐れた南渓和尚は、ツテを辿り、直親を南信州の寺にかくまってもらう。

“亡命”は10年に及び、その間、直親の居所は許婚である直虎にすら秘密にされた。直虎は直親の無事を祈りつつも、悶々とした日々を送ったはずだ。直虎には別の縁談が持ちかけられたが、断わっている。直親に操を立てたのだ。なんと健気なことであるか。

 結局、悲嘆に暮れ、直虎は龍潭寺に出家を決意する。そのとき再び知恵を出したのが南渓和尚。直虎がいつか跡取りになる可能性も考え、二度と還俗(げんぞく)できない尼ではなく、還俗できる坊主になるよう勧め、代々井伊家の跡取りが名乗った「次郎」に男であることを示す「法師」を合わせた「次郎法師」と名付けたのである。

関連キーワード

関連記事

トピックス

林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
《部屋はエアコンなしで扇風機が5台》「仏壇のろうそくに火をつけようとして燃え広がった」林家ぺー&パー子夫妻が火災が起きた自宅で“質素な暮らし”
NEWSポストセブン
1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
林家ペーさんと林家パー子さんの自宅で火災が起きていることがわかった
「パー子さんがいきなりドアをドンドンと…」“命からがら逃げてきた”林家ペー&パー子夫妻の隣人が明かす“緊迫の火災現場”「パー子さんはペーさんと救急車で運ばれた」
NEWSポストセブン
豊昇龍
5連勝した豊昇龍の横綱土俵入りに異変 三つ揃いの化粧まわしで太刀持ち・平戸海だけ揃っていなかった 「ゲン担ぎの世界だけにその日の結果が心配だった」と関係者
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
韓国アイドルグループ・aespaのメンバー、WINTERのボディーガードが話題に(時事通信フォト)
《NYファッションショーが騒然》aespa・ウィンターの後ろにピッタリ…ボディーガードと誤解された“ハリウッド俳優風のオトコ”の「正体」
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
NEWSポストセブン