全身がんを公表している樹木希林(73才)。これまで女性セブンは幾度かにわたって樹木に「がんと生きる」ことについて話を聞きたいと取材依頼をしていたが、そのたびに「頼むから、おばあさんのことは放っておいて」と固辞されていた。そんな樹木がこの度、度重なる本誌の依頼に応えて電話をかけてきてくれた。
不治の病ではなくなった今でこそ、がんを公表し、その生き様を見せてくれる人は少なくない。2016年は特に北斗晶、南果歩、小林麻央ら有名人が、「がんと生きる」ということの大変さと希望を身をもって教えてくれた。
しかし樹木が公表したのは10年以上前のこと。「みんな自分が病気であることを言わないけど、私は言っちゃったほうが早い」と思って公表したという樹木だが、だからこそ、彼女の生き方は、病気になっても明るく元気に長生きできるという願いの道標となっている。
樹木は過去にインタビューでこんな死生観を明かしている。
「先に逝く人は、本当は死んでいく姿を見せていかなければならないのに、それが見せられなくなっている。死を実感できなくなっているから、死が怖くなってしまっているのではないかと思う。親しい人の死が身近に見られない今の世の中は、ちょっと不幸になったのかなと。損しているなと思います」
それゆえ本誌「女性セブン」2016年12月29日号でお伝えした、橋田壽賀子さんが「安楽死で逝きたい」と熱望していることに、スピリチュアリストの江原啓之さんが反論したことについて、樹木は「どちらかと言えば江原さんと同じ意見だ」と言う。
「どっち派というか、どっちでもいいんですけどね。でも橋田さんは健康のためにプールで歩いてるかたですから、やっぱり生きたいのよ。死ぬ間際になったらきっと“まだ死にたくないわ”って言うわよ(笑い)。
まだ死が迫ってないからそう言ってるのよ。それに安楽死っていうのは話の都合でしょ? “死ぬのなら楽に死にたいわ”っていう。大丈夫よ、そういう人のことは放っておいて。もう、生きるわよ、ああいう人は。
でもやっぱり今の人たちは死に上手じゃなくなっちゃってるよね、もう、いつまで生きてるの?っていうぐらい、死なないし。生きるのも上手じゃないし。彼岸と此岸っていうじゃない。向こう岸が彼岸、彼の岸ね、こっち岸は此岸、こっち岸って書いて此岸っていう言い方があるじゃない。要するに生きているのも日常、死んでいくのも日常なんですよ。
まあ、そんな感じだけど、そういうのも書くの? もうそんなことは私、いろんなところで話してるから、つまらないわよ。
そういえば朴槿恵さん(韓国大統領)っていうのはきれいになったよね。でもなんかつまらない顔になっているじゃないですか。やっぱり、味わいがないもんね。注射しちゃうと。私も注射をしたり、切ったりしてやってるけど、なかなか(治療は)うまくいかないですね」
真剣な話をしているかと思えば、笑っていいかどうかわからないような身の上話をする樹木。最後は記者を叱咤激励してくれた。
「とにかくね、ちょっと、もう少し面白がって世の中を頑張ってくださいよ。私はやっっぱり自分がくたびれて帰ってきたときに、深刻なドラマは見ないで、お笑いを見てる。ピコ太郎が面白いわけじゃないけど、受け手の人間はそんなものよ。読み手と私の今の状況は今ぴたっと合ってないんですよ。絶望的なことばかりじゃないですよ、世の中は。まだまだ面白いことがいっぱいあるから。私は始末していく人間だから、無責任なことばっかりやってられないの。すみませんね、役に立たなくて。そういうわけで私のことはもうご放免ください。とにかくがんばってくださいよ。楽しくやりましょう」
※女性セブン2017年1月5・12日号