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「森ビル」と「森トラスト」を分けた兄弟の理念の違い

森ビルが手がけた六本木ヒルズ

 アークヒルズや六本木ヒルズなどの都市開発を手がける森ビルと、丸の内トラストタワーや東京汐留ビルディングなどを開発した森トラストは別会社だが、創業者は同じ一族である。

 森ビルは、森泰吉郎氏が1955年に設立(当時は森不動産)。泰吉郎氏の長男、森敬氏は慶応大学理工学部教授になり(1990年に死去)、次男の森稔氏、三男の森章氏が森ビルに入社した。

 泰吉郎氏は1993年に死去し、森ビルの経営は稔氏と章氏が担うこととなった。稔氏は専務から社長に就任。章氏は森ビルの常務から、「森ビル開発」(後の森トラスト)の社長に就任した。

 1994年9月に章氏は、森ビル開発を数年後に上場する意向があると明らかにした。上場するとなれば、両社で共同してやってきた業務を分離する必要がある。

 5年かけて関連会社も分割統合し、1999年1月に森ビルと森ビル開発は別会社となった。これに合わせ、森ビル開発は森トラストに社名を変更。2004年には株式の持ち合いも解消し、森トラストは東証一部への上場も果たした。

 分離の背景には兄弟の不仲があるとする見方があるが、『経済界』編集局長の関慎夫氏は否定する。

「弟の章氏が入社する時点で、独立が見込まれていたと見る方が正しいでしょう。2人の性格は全然異なる。兄の稔氏はロマンチストで、不動産業というよりも都市づくりをしたいという意識が強い。だからこそ、17年も掛けて六本木ヒルズの再開発を成し遂げた。一方の章氏は信託銀行で働いていたこともあり、収益をしっかり考えるリアリストです。この2人が一緒に経営はできないことは最初から分かっていたのです」

 かつて2人は新聞のインタビューに「切磋琢磨してグループが成長すればよい」(稔氏)、「営業分割は経営路線の違いを反映した当然の結果」(章氏)と語っており、あくまで路線の違いであることを強調した。

 稔氏は2012年に死去。現在は内部昇格した辻慎吾氏が社長を務めるが、役員には稔氏の妻・佳子氏、稔氏の娘婿・浩生氏が名を連ね、浩生氏は次期社長の呼び声も高い。一方、森トラストは、3月に森章氏が代表権のある会長に就任し、長女の伊達美和子専務が社長に昇格する人事を発表した。

「章氏には3人の子供がいて、全員が森トラストに入社しましたが、長男、次男はすでに退社し、長女が社長になった。章氏は3人を競わせ、最終的に長女が残ったということだと思います」(前出・関氏)

 創業家には創業家なりの継承の厳しさがあるのだ。

※週刊ポスト2017年1月1・6日号

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