──子供が生まれて、自分の生き方も変わりそうですか?
井上:保険に入ってみたりしました。これから少なくとも20年くらい、彼が20歳になるくらいまでは元気でどうにかしないといけないという気持ちでいます。
──お父さんになるまで、時間がかかりましたね。
井上:やっと授かりました。結婚して6年、子どもを作ろうと思ってから5年も経ちました。ずいぶん時間もかかり、不妊治療もしました。念願の子どもがやってきてくれて、うれしいですよ。これから子育てに関して、こんなはずじゃなかったという思いすることもあると思いますが、いまは感謝しかないです。よく、うちに生まれてくれたなとしか思わないです。
──将来、お子さんにしてほしいことはありますか?
井上:これは度が過ぎた願望なのかもしれないけれど、中国語と日本語を解する人間になると思うので、そのうえで漫画を描いてほしい。漫画じゃなくてもいいけれど、何か表現する人になってほしい。なぜなら、僕がその描かれたものとそれを受け取る人たちを見たいから。俺が中国人だったら、間違いなく中国人に向けて漫画を描いていたけれど、実際の自分はできないから、息子には二つの国へ向けて描いてほしいです。
──やはり中国はこれからも見逃せない国ですか?
井上:これから先は、残念だと思う人もいると思いますが、中国の時代なんですよ。規模がでかいということ、人数が多いこと、これはしょうがない。地球上の4~5人に1人は中国人なんですよ。勝つ負けるじゃなくて、僕たちは中国を見守っていくしかない。
とはいえいずれ、バオバオが死ぬまでには中国共産党はなくなると思っています。俺が死ぬまでにはたぶん間に合わない。中国共産党が滅びるのを見られるのは純粋にうらやましい。その様子を是非、バオバオには漫画にしてもらいたい。
──米国大統領にドナルド・トランプ氏が決まるなど、激動の時代に生まれてきましたね。
井上:これから、大変な時代になると思います。その中を、中国語と日本語ができる人間として関われる、こんな面白いことはないですよ。中国人がどう反応しているのか、みてもらいたい。ということで、なるべくバイリンガルに育てようと思っています。じゃんぽ~る西さんが描いている『モンプチ 嫁はフランス人』によれば、嫁さんがフランス語、自分が日本語を喋るのを子どもの前で徹底的に守ると、バイリンガルになるそうです。中途半端に混ぜると、どちらの言語も中途半端になるとか。
どうにかして子どもをバイリンガルに育てたうえで、いい学校に行ってほしいということよりも、絵がかけて、マンガを描けるようになってほしい。中国人に対してマンガを描いて、彼らがマンガをどう受け止めているのかを日本人に紹介してほしい。そういう人になるといいな。きっと面白いと思います。何より、やっぱり中国共産党が滅びるのを見られるのは、うらやましいですよ。
●井上純一(いのうえじゅんいち)/1970年生まれ。宮崎県出身。漫画家、イラストレーター、ゲームデザイナー、株式会社銀十字社代表取締役社長。多摩美術大学中退。ひと回り以上年下の中国人妻・月(ゆえ)との日常を描いた人気ブログ『中国嫁日記』を書籍化しシリーズで累計80万部を超えるベストセラーに。2014年から広東省深セン在住だったが、2016年に日本に戻った。著書に『月とにほんご 中国嫁日本語学校日記』(監修・矢澤真人/KADOKAWA アスキー・メディアワークス)など。最新刊『中国嫁日記』6巻(KADOKAWA エンターブレイン)が発売中。