──出産にも立ち会ったのですか?

井上:立ち会いました。ツイッターでもつぶやきましたが、こんなに大変な思いをして生まれてくるのに、殺人とかやっちゃだめだよと大げさでなく思いました。すべてのお母さんにありがとう、戦争とかなくなれ、と本気で思いました。こんなに大変な思いをして産んだのに、理不尽に死ぬのは親に悪いだろう、普段なら考えもしないスケールのことが思い浮かびました。 

──初めて息子のバオバオちゃんを抱いたときは、どんな感じでしたか?

井上:最初は、なんだかよく分からない感じでした。

──でも、かわいいんですよね。

井上:絵を学んでいる人間は全員そうなんですが、美術的な訓練、デッサンなどをやると、絶対的な美の意識みたいなものがあるんですよ。絶対音感みたいな、何が美しいかという感覚が培われる。だから、その美意識の基準でいけば、自分の子どもがそんなに可愛くないことは頭ではわかるんです。生まれた瞬間に、あご以外は僕にそっくりだとわかりましたし(笑)。でも、それとは別に世界一、かわいい。

──それでマンガでのバオバオちゃんも、マンガの井上さん似ではなくなるんですね。

井上:この子が世界一可愛いわけではないことはわかっているが、世界一かわいい。これはもう、しょうがない。子どもを持つと必ず思うことだし、みんな親バカになるんです。この「かわいい」という気持ちを表現するためには、僕と同じ顔にしちゃいけないんです(笑)。そして、そうすることはマンガとして正しい。この、うちの子がかわいいという感情を味わって初めて、ありとあらゆる写真、PCやスマホの壁紙を自分の子どもにするのがわかりました。

──毎日が、不思議な感覚につつまれた子育てになっていそうですね。

井上:ただ、いま思うのは、いま見る赤ん坊が、これから将来的に、皆と同じように歩いたり喋ったりするようになるというのが不思議でならない。人間の部品みたいなものなので。プラモデルでいうなら、ランナー(※複数の部品がついている枠)についている状態。これが果たして、組み上がると車や飛行機など、完成品になるのだろうかと半信半疑な感じに近いです。

 たくさんの育児マンガを読んでも、なぜ作中の人たちはこれほど感動するのかについてわからなかった。でも、今ならわかる。これは、ボケの時間が長いからです。本当だったら、今すぐにでも、お前はなんでもぞもぞもごもごしているのかとか、何でそんなに中途半端に万歳をしているのかとか、そういうことを親は子どもにツッコミたいんだけれど、子どもはそれがわからない。そして長い時間を経て、ようやくツッコミができる相手に成長する。そりゃ、こんなに長く時間がかかったら、みんな、感動しますよ。

関連記事

トピックス

ロッカールームの写真が公開された(時事通信フォト)
「かわいらしいグミ」「透明の白いボックス」大谷翔平が公開したロッカールームに映り込んでいた“ふたつの異物”の正体
NEWSポストセブン
大谷と真美子さんの「冬のホーム」が観光地化の危機
《白パーカー私服姿とは異なり…》真美子さんが1年ぶりにレッドカーペット登場、注目される“ラグジュアリーなパンツドレス姿”【大谷翔平がオールスターゲーム出場】
NEWSポストセブン
和久井被告が法廷で“ブチギレ罵声”
【懲役15年】「ぶん殴ってでも返金させる」「そんなに刺した感触もなかった…」キャバクラ店経営女性をメッタ刺しにした和久井学被告、法廷で「後悔の念」見せず【新宿タワマン殺人・判決】
NEWSポストセブン
初の海外公務を行う予定の愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、初の海外公務で11月にラオスへ、王室文化が浸透しているヨーロッパ諸国ではなく、アジアの内陸国が選ばれた理由 雅子さまにも通じる国際貢献への思い 
女性セブン
几帳面な字で獄中での生活や宇都宮氏への感謝を綴った、りりちゃんからの手紙
《深層レポート》「私人間やめたい」頂き女子りりちゃん、獄中からの手紙 足しげく面会に通う母親が明かした現在の様子
女性セブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
《ママとパパはあなたを支える…》前田健太投手、別々で暮らす元女子アナ妻は夫の地元で地上120メートルの絶景バックに「ラグジュアリーな誕生日会の夜」
NEWSポストセブン
グリーンの縞柄のワンピースをお召しになった紀子さま(7月3日撮影、時事通信フォト)
《佳子さまと同じブランドでは?》紀子さま、万博で着用された“縞柄ワンピ”に専門家は「ウエストの部分が…」別物だと指摘【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
「プラトニックな関係ならいいよ」和久井被告(52)が告白したキャバクラ経営被害女性からの“返答” 月収20〜30万円、実家暮らしの被告人が「結婚を疑わなかった理由」【新宿タワマン殺人・公判】
NEWSポストセブン
山下市郎容疑者(41)はなぜ凶行に走ったのか。その背景には男の”暴力性”や”執着心”があった
「あいつは俺の推し。あんな女、ほかにはいない」山下市郎容疑者の被害者への“ガチ恋”が強烈な殺意に変わった背景〈キレ癖、暴力性、執着心〉【浜松市ガールズバー刺殺】
NEWSポストセブン
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
「意識が朦朧とした女性が『STOP(やめて)』と抵抗して…」陪審員が涙した“英国史上最悪のレイプ犯の証拠動画”の存在《中国人留学生被告に終身刑言い渡し》
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン