ライフ

戦国の女傑、百の首を獲るも自刃した悲劇の「鶴姫」など

直虎以外にも女傑は存在(「おんな城主 直虎」HPより)

 男性中心社会だった戦国時代に“おんな城主”がいた──その意外性から注目が集まる新・大河ドラマ『おんな城主 直虎』だが、実は同時代に男たちと対等、ときにはそれ以上に渡り合った女性が井伊直虎以外にも存在した。直虎に勝るとも劣らない戦国の女傑たちを紹介しよう。

●妙林尼(みょうりんに、生没年不詳)
 63の首を挙げた最強の尼僧。「戦上手といえば鶴崎城(大分県大分市)の戦いで活躍した妙林尼です」というのは、NHK大河ドラマ『おんな城主直虎』の時代考証を手がけた静岡大学名誉教授の小和田哲男氏だ。妙林尼は、キリシタン大名として知られる大友宗麟の重臣で鶴崎城を居城とする吉岡鑑興(あきおき)の妻。鑑興が耳川の戦い(1578年)で島津軍と戦って討ち死にしたため、出家して妙林尼と名乗った。

 鶴崎城の城主を継いだのは鑑興の子・統増(むねます)だが、島津軍が鶴崎城に迫るなか、統増は島津軍に攻め込まれた主君・大友宗麟を支援するため家臣を連れて鶴崎城を離れてしまい、残されたのはわずかな兵と女性、子供のみとなった。普通なら城を捨てて逃げるところが、妙林尼は奮起。城の拡張・修理工事を行ない、城外に罠を仕掛けた。

 敵軍の大将が尼だとなめてかかった島津軍3000の軍勢は、掘られた落とし穴に次々とはまる。そこへ城内から一斉に鉄砲が放たれた。島津軍は慌てふためいて退却したという。

 戦国時代の九州地方の武将について記した『豊薩(ほうさつ)軍記』によると、妙林尼は策略を繰り広げて16度にわたる島津軍の侵攻を退けたが、矢尽き刀折れ、開城を受け入れた。

「妙林尼が本当にすごかったのはここからです。占領軍である島津方の3人の大将に『行き場所がない』といって城外の屋敷に住み続けることに成功すると、三将を酒宴で接待するなどして彼らの気が緩むように仕向けます。実はそれが妙林尼の謀略でした」(小和田氏)

 秀吉の九州攻めが本格化すると、今度は島津軍が窮地に陥り、鶴崎城を守っていた三将も薩摩へ撤退することになった。その際に妙林尼は「自分も連れて行ってくれ」と頼み、退却する敵陣の中に伏兵を忍ばせておいて島津勢を奇襲した。その結果、2人の大将をその場で討ち取り、残る一人も流れ矢に当たって後に死亡した。

 妙林尼はこの戦で討ち取った首63を主君・大友宗麟のもとへ送ったところ、宗麟は絶賛した。この話を聞いた秀吉も妙林尼の知勇に感服するばかりだったという。

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン