ビジネス

解体危機の東芝 「社員に全く情報が下りてこない」との嘆き

切り売りの危機に陥っている東芝

 1月17日から20日までスイス・ダボスで開催された世界経済フォーラム(通称・ダボス会議)で「世界で最も持続可能性のある企業100社」のランキングが発表された。日本企業で最高位は67位の武田薬品工業で、ランクインしたのは他に医療用検査機器大手のシスメックス(70位)、アステラス製薬(85位)、NEC(86位)の3社のみだった。

「日本において、持続可能といえる“安泰”企業は一部です。たとえば原子力事業も傘下に持つGEなどの複合企業は数十兆円という事業規模。日本では日立が約10兆円で、東芝や三菱重工すら数兆円規模です。

 日本の多くの業界では複数社の大手が乱立している。そうなると経営状態が良くても会社ごと買収されたり、部門が切り売りされたりする可能性はどこも排除できないわけです」(経済誌『経済界』の関慎夫・編集局長)

 そうしたなかで、まさに切り売りの危機に陥っているのが、東芝だ。

 2015年に利益水増しの不正会計問題が発覚して巨額赤字に転落した東芝はその後、2017年3月期の最終損益では1450億円の黒字(連結決算)に転換する見通しだった。ところが、ここにきて米国での原発事業に関連して最大7000億円規模の巨額損失を計上する可能性が取り沙汰されている。

「金融機関は不正会計発覚後も、“資産や一部事業を売却すれば問題ない”として東芝を『正常債権』に分類していた。だが、損失がここまで膨れ上がる見通しになったため、大手行の間でも債権者区分をそのままにしていいのか、懸念され始めた。

 危機回避のためにはさらに事業を分社化し、大規模に外部資本を入れて自己資本を積み増すしかない」(金融ジャーナリスト・森岡英樹氏)

 そのため、営業利益の8割を稼ぎ出す“虎の子”である半導体事業の分社化、東芝テックなどの上場子会社の売却といった策が検討されている。

 すでに東芝は2016年3月期の赤字決算を受けて医療機器子会社をキヤノンに、白物家電子会社も中国マイディアグループ(美的集団)に売却済み。さらなる切り売りとなれば、まさに「解体」である。

 社内からは悲痛な叫びが聞こえてくる。20代社員(研究開発職)の声。

「毎日のように経営危機だ、解体だと報じられていますが、社員には全く情報が下りてきません。子供が生まれたばかりですが、このまま会社にいても先が見えないので、他の電機メーカーへの転職活動を始めました」

 かつての経団連会長企業が、沈没直前の巨大客船の様相を呈しているのだ。

※週刊ポスト2017年2月10日号

関連キーワード

トピックス

大谷翔平選手と妻・真美子さん
《チョビ髭の大谷翔平がハワイに》真美子さんの誕生日に訪れた「リゾートエリア」…不動産ブローカーのインスタにアップされた「短パン・サンダル姿」
NEWSポストセブン
石原さとみ(プロフィール写真)
《ベビーカーを押す幸せシーンも》石原さとみのエリート夫が“1200億円MBO”ビジネス…外資系金融で上位1%に上り詰めた“華麗なる経歴”「年収は億超えか」
NEWSポストセブン
神田沙也加さんはその短い生涯の幕を閉じた
《このタイミングで…》神田沙也加さん命日の直前に元恋人俳優がSNSで“ホストデビュー”を報告、松田聖子は「12月18日」を偲ぶ日に
NEWSポストセブン
高羽悟さんが向き合った「殺された妻の血痕の拭き取り」とは
「なんで自分が…」名古屋主婦殺人事件の遺族が「殺された妻の血痕」を拭き取り続けた年末年始の4日間…警察から「清掃業者も紹介してもらえず」の事情
(2025年11月、ラオス。撮影/横田紋子)
熱を帯びる「愛子天皇待望論」、オンライン署名は24才のお誕生日を節目に急増 過去に「愛子天皇は否定していない」と発言している高市早苗首相はどう動くのか 
女性セブン
「台湾有事」よりも先に「尖閣有事」が起きる可能性も(習近平氏/時事通信フォト)
《台湾有事より切迫》日中緊迫のなかで見逃せない「尖閣諸島」情勢 中国が台湾への軍事侵攻を考えるのであれば、「まず尖閣、そして南西諸島を制圧」の事態も視野
週刊ポスト
盟友・市川猿之助(左)へ三谷幸喜氏からのエールか(時事通信フォト)
三谷幸喜氏から盟友・市川猿之助へのエールか 新作「三谷かぶき」の最後に猿之助が好きな曲『POP STAR』で出演者が踊った意味を深読みする
週刊ポスト
ハワイ別荘の裁判が長期化している(Instagram/時事通信フォト)
《大谷翔平のハワイ高級リゾート裁判が長期化》次回審理は来年2月のキャンプ中…原告側の要求が認められれば「ファミリーや家族との関係を暴露される」可能性も
NEWSポストセブン
今年6月に行われたソウル中心部でのデモの様子(共同通信社)
《韓国・過激なプラカードで反中》「習近平アウト」「中国共産党を拒否せよ!」20〜30代の「愛国青年」が集結する“China Out!デモ”の実態
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《自宅でしっぽりオフシーズン》大谷翔平と真美子さんが愛する“ケータリング寿司” 世界的シェフに見出す理想の夫婦像
NEWSポストセブン
お騒がせインフルエンサーのボニー・ブルー(時事通信フォト)
《潤滑ジェルや避妊具が押収されて…》バリ島で現地警察に拘束された英・金髪美女インフルエンサー(26) 撮影スタジオでは19歳の若者らも一緒だった
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! プロ野球「給料ドロボー」ランキングほか
「週刊ポスト」本日発売! プロ野球「給料ドロボー」ランキングほか
NEWSポストセブン