芸能

小日向文世 90歳まで現役で95歳まで生きると決めた

東京・日比谷の路地裏で

 昨年のNHK大河ドラマ『真田丸』で天下人・秀吉を怪演した小日向文世(63)。無邪気さと残酷さが複雑に入り混じる新たな秀吉像でお茶の間を魅了した男が、今度は日本一情けないダメ親父としてスクリーンに登場する。

 2月11日に公開される映画『サバイバルファミリー』は、地球から電気が突然消滅した世界で生き残るために家族4人が悪戦苦闘する、笑いあり、感動ありの物語。小日向は、口先だけの頼りなくて頑固で独りよがりな父親・鈴木義之を演じる。

 演出家・串田和美が率いる劇団「オンシアター自由劇場」に23歳で入団して役者の道を歩み始めてから、今年、俳優人生40周年を迎えた。

 今はテレビや映画といった映像の世界を中心に活躍する小日向だが、劇団が解散するまでの19年間は舞台俳優として活動した。駆け出しの頃、舞台の世界と映像の世界の狭間で心が揺れ動いた時期もあったと吐露する。

「最初の3年間で僕、劇団を辞めようと思ったんですよ。北海道の田舎でテレビと映画を観て育ちましたから、テレビや映画に出る俳優になりたかったんです。でも当時は他の劇団の舞台に出ることさえ許されない雰囲気で、ましてやテレビに出たいなんて言っちゃいけないと思っていました。

 それで串田さんに辞めたいと伝えたら、テレビでもいい仕事だったらやればいいじゃないかと言ってくださって。そこで急に気が楽になって、舞台に集中するようになったんです」

 憧れのテレビの仕事は、劇団時代の小日向のもとに一度だけ訪れた。それが、ビートたけし主演のドラマ『説得 エホバの証人と輸血拒否事件』(TBS系、1993年)だった。

「脚本を担当した劇団黒テントの作家兼演出家の故・山元清多さんから、若い医師役をコヒ(小日向)にやってもらいたいと声をかけられたんです。30代後半のときでした。その物語は、たけしさんと2人のシーンで終わるんですよ」

 人生で初めてのドラマ経験は十数年後、北野武監督の映画『アウトレイジ』(2010年)につながっていく。小日向はやくざと渡り合うマル暴の悪徳刑事として、再び共演を果たした。

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