ライフ

妻が喜ぶ「死後離婚」 10年で1000件以上も増えている

妻たちはなぜ「死後離婚」を選ぶのか

 神奈川県に住む町田より子さん(61・仮名)は昨年、肺がんで35年間連れ添った夫を亡くした。葬儀では夫の親や兄弟と共に悲しみに暮れた彼女だが、この2か月後に彼らと縁を切ることを決意した。

「夫の家族とは折り合いが悪く、お盆とお正月にも顔を合わせないぐらい疎遠になっていました。大きなトラブルはなかったけど、好きになれなかった。夫がいなくなった今、もう彼らと親族である必要はないのだからと、“死後離婚”したのです」

 こうした事例をまとめた『死後離婚』(洋泉社刊)が、女性たちの間で密かに話題となっている。

 妻にとっての死後離婚とは、夫の親や兄弟との親戚関係(姻族関係)を、夫の死後に解消することを指す。

 通常、妻は夫を亡くしても、仮にその親族が生活に困窮すれば、民法の規定で彼らを助ける義務が生じる。お金に困れば、ある程度は生活を支えなければいけない。それは逆も然り。親族という繋がりがあるからこそ、万が一の時、生活の支え合いが可能となる。

 亡夫としては「親族で互いに助け合って生きていってもらえる」と安心してあの世へ逝けるというもの。しかし、この関係をたった一枚の紙が寸断する。

「姻族関係終了届」という書類を役所に提出すれば、法律上、妻は亡夫の親族とは赤の他人になる。これが死後離婚である。未亡人が提出すれば、亡夫の親族に拒否する権利はない。

 2005年に1772件だった姻族関係終了届の提出数は、2015年には2783件と、10年で1000件以上も増えている。共著者の一人である行政書士の中村麻美氏が言う。

「死後離婚は、夫婦どちらかが死んだ後の自由を約束するものですが、相談者は60~70代の女性が圧倒的に多い。それぐらいの年齢で夫を亡くすケースが多いからでしょう。また、長寿社会になり、夫の親が生きていることが多いのも理由のひとつです。亡夫、あるいはその家族からの解放を求める女性が多いことがうかがえます」

関連キーワード

関連記事

トピックス

都内の人気カフェで目撃された田中将大&里田まい夫妻(時事通信フォト/HPより))
《ファーム暮らしの夫と妻・里田まい》巨人・田中将大が人気カフェデートで見せた束の間の微笑…日米通算200勝を目前に「1軍から声が掛からない事情」
NEWSポストセブン
浅草・浅草寺で撮影された台湾人観光客の写真が物議を醸している(Xより)
「私に群がる日本のファンたち…」浅草・台湾人観光客の“#羞恥任務”が物議、ITジャーナリスト解説「炎上も計算の内かもしれません」
NEWSポストセブン
新横綱・大の里(時事通信フォト)
《横綱昇進》祖父が語る“怪物”大の里の子ども時代「生まれたときから大きく、朝ご飯は2回」「負けず嫌いじゃなかった」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《スヤスヤ寝顔動画で話題の佳子さま》「メイクは引き算くらいがちょうどよいのでは…」ブラジル訪問の“まるでファッションショー”な日替わり衣装、専門家がワンポイントアドバイス【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
ヤクザが路上で客引きをしていた男性を脅すのにトクリュウを呼んで逮捕された(時事通信フォト)
《ヤクザとトクリュウの上下関係が不明に》大阪ミナミでトクリュウを集めて客引き男性を脅して暴力団幹部が逮捕 この事件で”用心棒”はどっちだったのか 
NEWSポストセブン
2013年大阪桐蔭の春夏甲子園出場に主力として貢献した福森大翔(本人提供)
【10万人に6例未満のがんと闘う甲子園のスター】絶望を支える妻の献身「私が治すから大丈夫」オリックス・森友哉、元阪神・西岡や岩田も応援
NEWSポストセブン
新横綱・大の里(時事通信フォト))
《地元秘話》横綱昇進の“怪物”大の里は唯一無二の愛されキャラ「トイレにひとりで行けないくらい怖がり」「友達も多くてニコニコしてかわいい子だったわ」
NEWSポストセブン
ミスタープロ野球として、日本中から愛された長嶋茂雄さんが6月3日、89才で亡くなった
長島三奈さん、自身の誕生日に父・長嶋茂雄さんが死去 どんな思いで偉大すぎる父を長年サポートし続けてきたのか
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
金髪美女インフルエンサー(26)が “性的暴力を助長する”と批判殺到の「ふれあい動物園」企画直前にアカウント停止《1000人以上の男性と関係を持つ企画で話題に》
NEWSポストセブン
逮捕された波多野佑哉容疑者(共同通信)。現場になったラブホテル
《名古屋・美人局殺人》「事件現場の“女子大エリア”は治安が悪い」金髪ロングヘアの容疑者女性(19)が被害男性(32)に密着し…事件30分前に見せていた“親密そうな様子”
NEWSポストセブン
東京・昭島市周辺地域の下水処理を行っている多摩川上流水再生センター
《ウンコは資源》排泄大国ニッポンが抱える“黄金の資源”を活用できてない問題「江戸時代の取引金額は10億円前後」「北朝鮮では売買・窃盗の対象にも」
NEWSポストセブン
ブラジル公式訪問中の佳子さま(時事通信フォト)
《佳子さまの寝顔がSNSで拡散》「本当に美しくて、まるで人形みたい」の声も 識者が解説する佳子さま“現地フィーバー”のワケ
NEWSポストセブン