――2時10分、フロアの明かりが消され、交差点周辺が一気に暗くなる。厨房の明かりはまだ灯っていて、奥でスタッフが動いている姿が遠目に見えた。
ファミレスがなくなるわけじゃない。24時間営業がなくなるだけ。しかし、誰かと一緒に窓一面の朝陽を浴びながら翌朝を迎えることがなくなってしまうのが寂しい――石原さんは続ける。
「漫画喫茶に客を取られたっていうけど、ファミレスは全然違いますよ。
あの時間、あそこにあるのは仲間とのトークだけ。それを乗り越えた朝、うわーっていう絶望感もあるけど達成感もある。あの独特のけだるさはファミレスじゃないと味わえない。釈迦だって明けの明星に悟りを開いたんですから」(石原さん)
石原さんは、ピコルと呼ばれる押しボタンで店員を呼ぶシステムが導入された頃から、機械に頼ることへの危機感を持っていたと言う。
「今はなんでも個の時代で、若者は飲みにも行かず、遊ぶこともなく、家で過ごすって言いますよね。スマホがあるからつながってられるって。でもそれがすごく危険じゃないかって。たとえば“大丈夫?”って聞いて“大丈夫”って答えが来ても、実は大丈夫じゃなかったりすることがLINEではわからないんですよ。青白い顔して“大丈夫”って言ってるかもしれない。
ファミレスでは“何かあったのか聞いてほしい”とため息ばかりこぼす友人がいて(笑い)、むかつくけど、それだって気づけるのは会ってるからなんですよね。そういうことも、深夜2時から明け方のあの時間だから話せたりするんですよね」(石原さん)
※女性セブン2017年2月23日号