振り返れば、池田氏が会長に就任した当時は、創価学会は世間的にはカルト的な宗教と見られ、その象徴が池田氏であるとのイメージが濃厚でした。しかし、文献などから分析すると、池田氏は学会を社会的に確立した組織にするため、内部を改革した人物だと考えられます。
具体的には、創価高校・大学など教育機関を整備したり、体育祭・文化祭を催したりするなど、会員の子供たちを会員にする「組織内再生産」の仕組みを整えました。すでに大きくなった学会組織が、世間の批判を招くことなく一定の地位を確保することを考えたのです。
また、1964年には「公明政治連盟」を改組し、「公明党」を設立。学会と政党との組織的な分離策も進めました。
さらに、池田氏の時代には一定数の会員が労働者階級から支配層に連なる中間層へと社会的地位を上昇させたと考えられます。そうすると世間の保守的な主流=自民党的な世界から認められるようになり、その証しとして公明党は自民党とともに与党となっています。これがある意味、「学会が世間の中に位置づけられる」という池田氏が抱いていたと考えられる方針の、達成と言えるでしょう。
●いけだ・だいさく/1928年、東京都生まれ。富士短期大学卒。1947年、19歳で創価学会に入会。戸田城聖理事長(後の第二代会長)に師事。1960年、創価学会第三代会長に就任。1979年、同名誉会長。1975年、SGI(創価学会インタナショナル)会長。主な著書に、小説『人間革命』(全12巻)など。
【創価学会】1930年11月、牧口常三郎・初代会長と戸田城聖・第二代会長(当時理事長)によって創立される。戦中の政府による弾圧を経て、戦後に再建。現在、日本では公称827万世帯の会員がいる。日蓮の仏法を信奉している。
※SAPIO2017年3月号