「鶏のから揚げ」に「コロッケ」「ポテトサラダ」を加えた惣菜3種は、スーパー業界では「惣菜3種の神器」とも呼ばれ、各店は特に力を入れている。大手スーパーに20年勤務した経歴を持つ、ショッピングアドバイザーの今野保氏がいう。
「この売れ筋の3商品が美味しくないと、他の総菜も売れなくなる。一度離れたお客さんは2~3か月は戻らないといわれているので、これらはコストと手間暇をかけて店内で調理することが多いんです。オリジナルレシピを開発するなど、研究に余念がない」
ただ、スーパーにとって、惣菜コーナーの食品は低価格で売るために、消費期限の迫った生鮮食品を“再利用”する重要な役割も持っている。
例えば100g・98円(ゴルフボールサイズで3個入り)で売られているような鶏のから揚げは、前日に精肉コーナーで『鶏もも肉』として100g・138円で売られていたものを再利用しているケースもあるという。
コロッケでもそれと同様のことが行なわれている。
「国産の牛肉や豚肉が売れ残った場合には、翌日朝にすぐにミンチにしてコロッケに入れる。それらの肉は元々品質が良いので、冷凍食品のものに比べて格段に美味しいコロッケができるんです」(大手スーパー社員)
そうして作られたコロッケは1個50円を切る破格の値がつくこともあるというが、「その日のうちにほぼ確実に完売するので、原価ギリギリでもなんとか販売できる」(同前)という。
500円してもおかしくないような大きなトンカツが1枚100円以下で売られていて驚くこともある。食べてみると、驚くほどジューシーだ。食品表示アドバイザーの垣田達哉氏が解説する。
「これは、豚肉に秘密がある。もともと安く、しかも古くなっている肉でも一晩重曹に漬ければ柔らかくなる。これも廃棄寸前の食品を再利用するスーパーの知恵です」
一方で、その他の揚げ物は冷凍の既製品が多いという。
「メンチカツでいえば、外国産の安い肉を原材料とする既製品を、冷凍で仕入れることでコストを下げているスーパーもあります。
そういった店では、店では揚げ直すだけなので、調理技術が必要な職人を雇わずに済むため人件費もそれほどかからない。スーパーの惣菜に揚げ物が多いのはこのためだといわれています」(垣田氏)
スーパーの精肉コーナーで牛挽肉を買えば100g・150円でも、メンチカツが1枚50円なのにはこんな理由があったのだ。
※週刊ポスト2017年2月24日号