古馬になってからの馬体重の増減には注意が必要です。何走か続けて減、というのは筋肉が衰えている「馬体が寂しい」状態。逆にずっと増え続ける、というのもよくありません。
お腹に脂肪が乗ってきて、腹帯の後ろからのラインが長くたるんでくる。体が重くて走りたくなくなる。走らないと走れなくなる。動かないからますます太る。このへんは人間と一緒ですね。
競走馬の食事は高カロリーで、「カイバ食い」がよければ体重が増えていきます。主食は草。稲科のチモシーと豆科のアルファルファに、燕麦やとうもろこし、にんじんを食べます。馬にも好みがあり、より高カロリーの豆科好きの馬は体重が乗りやすい。カイバにはビタミン・ミネラルのサプリメントを上手に混ぜ込みます。競馬で使うカロリーを一気に入れるので、力士の食生活に似ているのかもしれません。
馬にとって食事は唯一の楽しみのはずですが、実は競走馬は食が細くなることも多いのです。食べると太り、体が重くなって走りがツラくなる。そこで自然と摂制の意識が芽生える。大食いだった馬が急に食べなくなったら、競走馬としての自覚が出てきた証拠。馬もダイエットするのです。
ところで、出走後はどのくらい体重が減るのでしょう。
馬は本番前のストレスからボロを出し、一度で3~4キロ、二度やれば、6~8キロ。汗や呼吸で1~2キロは減ります。レース直後に馬体重を量ることはありませんが、たいだい10キロは落ちるようです。
●すみい・かつひこ/1964年石川県生まれ。中尾謙太郎厩舎、松田国英厩舎の調教助手を経て2000年に調教師免許取得。2001年に開業、以後15年で中央GI勝利数23は歴代3位、現役では2位。(2017年2月13日終了時点)ヴィクトワールピサでドバイワールドカップ、シーザリオでアメリカンオークスを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカ、エピファネイア、サンビスタなど。
※週刊ポスト2017年3月3日号