実は、いま世の中のサラリーマンの多くは、それが可能になってきている。大半の会社は週休2日制だから、休日をスキルアップやネットワーク作りの時間に充てればよいのである。しかも、企業はバブル期までとは異なり、コスト削減のためにできるだけ残業を減らそうとしているので、定時退社や夕食に間に合う時間の帰宅が可能となれば、夕食を終えて就寝するまでの2~3時間も使える。つまり、多くのサラリーマンは自分の時間の4割くらいは、自分の将来に投資する時間があるはずなのだ。
植木等の名ゼリフ「サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ」ではないが、まさに今の日本のサラリーマンという地位は、天が与えてくれた低成長時代の“安全装置”であり“社会保障システム”だと思う。
なぜなら、サラリーマンは少しくらい仕事をサボったり手抜きをしたりしても簡単にはクビにならないし、まともに働いていない社員でもせいぜい配置転換される程度で、給料が下がらないケースも少なくないからだ(もちろん、だからといってサボったり手抜きをしたりしてもよいと言っているわけではない)。
一方、商店や飲食店などの自営業は、サボれば収入が減ってしまうので、そうはいかない。また、欧米企業のサラリーマンの場合はSOP(Standard Operating Procedure/標準作業手順書)やジョブスペック(Job Specification/やるべき仕事)が厳格に定められているため、そもそもサボることができない。そう考えると、日本のサラリーマンほど自分の将来に投資する時間を安定的に確保できる稼業はないのである。
退社後に居酒屋で同僚や友人と酒を飲んでくだを巻いたり、休日にゴルフをしたり、家でぼんやりとテレビを見たりしている暇があったら、その時間を使って自分のスキルを磨き、ネットワークを広げるべきなのだ。そういうことを今から始めれば、まだ競争相手が少ない“ブルーオーシャン”の中で起業や副業を成功させる機会があふれているから、努力次第で明るい将来が開けてくるはずだ。
日本の場合、個人よりも企業のほうが先に「国と一緒には沈まないぞ」と考えて動いている。人口減少によって日本の国内市場がシュリンク(縮小)し、企業が分け合うパイはどんどん小さくなっている。だから、ほとんどの日本企業は海外の伸びている市場に進出したり、盛んに外国企業をM&A(合併・買収)したりしているのだ。
※週刊ポスト2017年3月10日号