ライフ

日本の裁判官 「出された紅茶は飲むな」と教えられる

日本の裁判官の数が少ないのは問題

「人生でできるだけ出会いたくない職業、それは裁判官」というジョークがある。一方、裁判官モノ、法廷モノの本は人気がある。注目する2冊とひとりの裁判官について、フリーライターの神田憲行氏が書いた。

 * * *
 出版の世界では「裁判所内幕もの」「裁判官物語」というのは一定の人気があるようで、毎年それなりの数が出版されて名作もある。今年も早くも2冊の本が話題になっている。

 岩波新書から出た「裁判の非情と人情」がそのひとつ。筆者の原田國男氏は刑事裁判畑を約40年間も歩み、最後は東京高等裁判所部総括判事で定年退官した。現在は慶応大学法科大学院で教鞭を執られている。

 本の中で語られるエピソードでやはり興味深いのは、極めて高い倫理性を求められる裁判官の仕事である。たとえば原田氏は若いころ、先輩から教わったことがある。

《検証や証人尋問で現地に行った際、お茶を出されたら飲んで良いが、紅茶はだめだ》

 理由は紅茶ではブランデーのようなアルコールが入れられているおそれがある。すると後から、裁判官は酒を飲んでいたという話になりかねないからだという。

 また新聞記者から裁判官によくされる「三大愚問」というのも紹介している。「裁判官は赤ちょうちんに行きますか」「裁判官は賭けマージャンをしますか」「裁判官はトルコに行きますか」である。「トルコ」という言い方が時代がかっている。原田氏の答えは「行きます」「ご想像にお任せします」「絶対に行きません」だ。

 一方で原田氏は最近の若い法律家の倫理観の低さを危惧してるいる。たとえば裁判当日になって遅刻してくる若い弁護士がいる。裁判官も検察官も被告人も入廷しているのに、悠然と遅れてやってきて、詫びも入れずにどっかと椅子に座る。

《裁判官や検察官はそういうことに慣れているからよいが、被告人が不安そうにしている。どうしたのだろう、このまま来なかったら、自分が不利になるのではなどと考え込んでいる》

 裁判官に失礼、ではなく、被告人の心情に思いやっているところが、原田氏がどういう裁判官だったのかわかる。原田氏によると遅刻癖は法科大学院の学生にも見られることらしく、「(遅刻してはいけない)このような教育は法科大学院からたたき込まなければならない」としつつ、「しかし、そんなことまで法科大学院で教えなければならないのだろうか」と嘆く。

 アメリカ合衆国連邦最高裁判所判事は国民的スターとして人気がある。書店では判事の自伝や旅行記が並び、主人公として映画化されることもある。原田氏の本でも判事の出身州の地元民が連邦最高裁の傍聴席に「おらが町のヒーロー」をひと目みんと詰めかける様子が、驚きの筆で紹介されている。

トピックス

安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
「『あまり外に出られない。ごめんね』と…」”普通の主婦”だった安福久美子容疑者の「26年間の隠伏での変化」、知人は「普段通りの生活が“透明人間”になる手段だったのか…」《名古屋主婦殺人》
NEWSポストセブン
兵庫県知事選挙が告示され、第一声を上げる政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏。2024年10月31日(時事通信フォト)
《名誉毀損で異例逮捕》NHK党・立花孝志容疑者は「NHKをぶっ壊す」で政界進出後、なぜ“デマゴーグ”となったのか?臨床心理士が分析
NEWSポストセブン
2025年九州場所
《デヴィ夫人はマス席だったが…》九州場所の向正面に「溜席の着物美人」が姿を見せる 四股名入りの「ジェラートピケ浴衣地ワンピース女性」も登場 チケット不足のなか15日間の観戦をどう続けるかが注目
NEWSポストセブン
「第44回全国豊かな海づくり大会」に出席された(2025年11月9日、撮影/JMPA)
《海づくり大会ご出席》皇后雅子さま、毎年恒例の“海”コーデ 今年はエメラルドブルーのセットアップをお召しに 白が爽やかさを演出し、装飾のブレードでメリハリをつける
NEWSポストセブン
昨年8月末にフジテレビを退社した元アナウンサーの渡邊渚さん
「今この瞬間を感じる」──PTSDを乗り越えた渡邊渚さんが綴る「ひたむきに刺し子」の効果
NEWSポストセブン
三田寛子と能條愛未は同じアイドル出身(右は時事通信)
《中村橋之助が婚約発表》三田寛子が元乃木坂46・能條愛未に伝えた「安心しなさい」の意味…夫・芝翫の不倫報道でも揺るがなかった“家族としての思い”
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
「秋らしいブラウンコーデも素敵」皇后雅子さま、ワントーンコーデに取り入れたのは30年以上ご愛用の「フェラガモのバッグ」
NEWSポストセブン
八田容疑者の祖母がNEWSポストセブンの取材に応じた(『大分県別府市大学生死亡ひき逃げ事件早期解決を願う会』公式Xより)
《別府・ひき逃げ殺人》大分県警が八田與一容疑者を「海底ゴミ引き揚げ」 で“徹底捜査”か、漁港関係者が話す”手がかり発見の可能性”「過去に骨が見つかったのは1回」
愛子さま(撮影/JMPA)
愛子さま、母校の学園祭に“秋の休日スタイル”で参加 出店でカリカリチーズ棒を購入、ラップバトルもご観覧 リラックスされたご様子でリフレッシュタイムを満喫 
女性セブン
悠仁さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、筑波大学の学園祭を満喫 ご学友と会場を回り、写真撮影の依頼にも快く応対 深い時間までファミレスでおしゃべりに興じ、自転車で颯爽と帰宅 
女性セブン
クマによる被害が相次いでいる(getty images/「クマダス」より)
「胃の内容物の多くは人肉だった」「(遺体に)餌として喰われた痕跡が確認」十和利山熊襲撃事件、人間の味を覚えた“複数”のツキノワグマが起こした惨劇《本州最悪の被害》
NEWSポストセブン
近年ゲッソリと痩せていた様子がパパラッチされていたジャスティン・ビーバー(Guerin Charles/ABACA/共同通信イメージズ)
《その服どこで買ったの?》衝撃チェンジ姿のジャスティン・ビーバー(31)が“眼球バキバキTシャツ”披露でファン困惑 裁判決着の前後で「ヒゲを剃る」発言も
NEWSポストセブン