芸能

小椋佳「真似ただけの言葉で表現した詞に創造性はない」

小椋佳が語る、人の心の動きを生む歌の大切さ(写真/アフロ)

 懐かしい感情に触れると、安らかな気持ちになれる。童謡や唱歌などの叙情歌は、まさに、そんな気持ちにさせてくれる歌だろう。そしていま、日本の古き良き名曲をじっくり聴きたい、という人が増えている。テレビでは、BS局を中心に歌番組が人気を博している。3月7日には、明治、大正、昭和と歌い継がれてきた叙情歌の数々を収録した、隔週発売のCDつきマガジン『こころに響く 日本の歌』が創刊された。

 小椋佳さん(73)は1971年にデビュー。『シクラメンのかほり』や『愛燦燦(さんさん)』など多くの名曲を生み出してきた。2014年には、NHKホールで生前葬を行い、話題になった。創造性のある言葉とメロディーを作ってきた彼だから語れる素晴らしい歌とは――。

 * * *
 歌は、作った人と聴く人の受け止め方が全く違うことがあります。受け止め方は、それぞれなんだけれども、みんなが詞を新鮮だと感じてくれたんだと思います。

 歌詞には創造性が必要です。人間は、言葉を親から真似て覚えます。この真似ただけの言葉で表現した詞に創造性はないんです。

 本来、『愛燦燦』という日本語はありません。『愛』はあって、『燦燦』という言葉もあるのに、それをつなぐと、まったく別世界の新しいイメージを作り上げることができる。「過去達は優しく睫毛に憩う」という歌詞もそう。それぞれの言葉を知っていても、そんなの普通組み合わせない。

 大抵は「まぶたに浮かぶ」を使ってしまう。でも、「過去達は優しく睫毛に憩う」の方が強く伝わるんですよね。今までの言葉にはないほどの強さで。最初は「えっ?」と感じても、「ああ、納得」となる。

 それが作詞、歌というものです。

 もちろん、反感を持たれることもあって、創造には怖さもあります。でも、きっと最初にピカソの絵を見た人も「えっ?」「これはなんだろう」と思ったはず。そして見ているうちになんだか美しいと感じ、わかってくる。

 創造性とはそういう心の動きを生むものなんです。

※女性セブン2017年3月23日号

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