【ケース5】メガネショップで薦められて「遠近両用」の累進屈折力レンズを購入したが、遠くから近くに視線を移す際のゆがみが気になって気持ち悪くなる
「遠近両用」の累進屈折力レンズは便利な上に、老眼鏡に見えないという利点があるが、難点は“ゆがみ”が生じることだ。
「遠用と近用の度数の差を『加入度数』と呼ぶが、この数値が大きいレンズほど、ゆがみが生じやすい。初めて累進屈折力レンズを使う人は、加入度数+2D(Dは屈折力の単位)以上だと、ゆがみに慣れるまでに時間がかかるとされています。
見た目を気にしないなら『二重焦点』を選ぶのも手です。このレンズに慣れている高齢者のなかには、流行の累進屈折力レンズに見向きもせず、使い続ける人も多い」(我妻氏)
だが、「どうしても『遠近両用メガネ』がいい」という人も少なくない。そんな人に我妻氏はこうアドバイスを送る。
「フレームの選び方を工夫しましょう。レンズの縦の長さを大きめの32㎜以上にすれば、遠用部から近用部までの距離が長くなり、度数の変化が緩やかです」
『人生が変わるメガネ選び』の著者で、梶田眼科の梶田雅義院長は、“慣れ”の重要性を強調する。
「累進屈折力レンズに慣れるには、加入度数が小さいレンズから慣れていくしかない。そのためには、老眼の症状がそれほど強くない時期から使い始めた方がよい。45歳ぐらいまでに累進屈折レンズを使い始めるのが理想。
この時期を逃してしまった人は、『遠近』と『近近』2つの累進屈折力レンズを使い分けてゆがみに慣れるなどの工夫が必要となる」
近年、新タイプの老眼鏡も登場している。昨年6月から販売されているのが、「貼るだけの老眼鏡」である。米国アイウェアメーカー・ネオプティクス社が開発した「ハイドロタック」だ。日本で販売代行する「アウトス」の前川勇人氏がいう。
「現在お使いのメガネやサングラスのレンズに貼るだけのシールタイプで、レンズの大きさに応じてハサミで簡単に切ることができる。水で濡らすだけで接着でき、剥がして何度でも使える。ゴルフのサングラスや、マリンスポーツのゴーグルの上に貼ることができるので、アスリート志向のシニアに人気です」
「遠近両用コンタクトレンズ」も普及し始めている。スマイル眼科クリニックの岡野敬院長が解説する。
「遠近両用メガネならピントを合わせる際、視線を遠くを見るなら上に、近くを見るなら下にしなければならないが、コンタクトなら同じ目線で両方見ることができる。激しい運動する人には将来的な選択肢となるが、いまはまだ改良を重ねている段階で、レンズによっては見え方が安定しないというデメリットもある」
※週刊ポスト2017年3月24・31日号