「遠方まで来ていただいたのに水一本で申し訳ないんですけど(笑)、今まで私はインタビューも苦手で、みなさんにすごく迷惑をかけてきたのに、たくさん協力していただいて、少しでも感謝を伝えられたら、という気持ちで用意しました」
もともと雄弁ではなく、見出しに使えるような言葉を常に発するわけでもない。だが、どんな時も周囲を気遣う木村の人柄が、最後の引退報告会見でも随所で見られた。
カコミ取材の終盤、取材陣から思わずこんな言葉がかけられた。
「少し休んで、もしも『もう一度やろう』と思ったら、我々は何も文句など言いません。いつでも帰ってきて下さい。待っていますよ」
誰からも愛され、多くの人に惜しまれながら木村沙織はコートを去る。第二の人生もどうか幸せに。長い間、本当にお疲れさまでした。